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来たる12月13日、京都市アバンティホールにて平成18年度研究発表会を行います。これは、私どもの研究所における研究成果を広く一般の方々に知っていただくための催しで、毎年行っているものです。森林の保全・管理などに係わっている方や、動植物に興味のある方を対象にお話します。どなたでもお気軽にご参加下さい(予約不要、入場無料)。
「森を育むための遺伝研究」
(研究発表)
石田清(森林生態研究グループ長)
大西尚樹(生物多様性研究グループ)
生態学や林学の分野において、遺伝学的手法を用いた研究が増えてきました。遺伝子を扱うことで、従来の観察を主体とした解析方法ではわからなかったことが見えてくることがあります。
しかし、“遺伝子”という言葉だけで「なんだか難しそう...」と敷居が高いイメージもあります。そこで、「ササのクローン識別」、「スギの樹皮剥ぎ跡からの加害クマの特定」、「遺伝子を使ったアマミノクロウサギの個体数推定」などを題材に、どうして遺伝的手法を使うのか、遺伝子を扱うことで何がわかるのか、を解説します。
石田清(森林生態研究グループ長)
個体数が減少した植物の集団には、近親交配の程度が増加して生存率や繁殖量が減少するという、近交弱勢と呼ばれる現象が現れます。このため、絶滅が危惧される希少植物を長期的に保全管理するためには、そのような小集団でどの程度近交弱勢が現れるのか、そして近交弱勢の程度の増加を抑制するためにどのような遺伝的管理を行えば良いのかが問題となります。
ここでは、東海地方の低湿地に生育する希少樹木シデコブシの事例を通して、個体数が減少した集団に現れる近親交配と近交弱勢の実態を紹介するとともに、そのような集団を対象とした遺伝的保全管理の方法とその有効性について解説します。
吉丸博志(森林総合研究所森林遺伝研究領域・生態遺伝研究室長)
一つの樹種の中でも個体の間には遺伝的な違いがあります。また、異なる地域の間でも遺伝的な違いが多く見られます。このような種内の遺伝的な違いを遺伝的多様性といいます。林業的によい形質を持った品種を作る「育種」という作業では、成長が速いといったような好ましい形質を持った遺伝子型だけに絞り込んで残していくことを行いますが、天然林を良好な状態で維持する「保全」という目的の場合には、人の利用に好ましいかどうかにかかわらず様々な遺伝子型の個体を残すことを考えます。また、地域による違いを考慮することも重要です。
したがって、天然林の保全のためには、様々な樹種がどのような遺伝的多様性を持ち、また地域間でどのように異なるかについての研究が必要です。ここでは、広域に分布するエゾマツ・トウヒ・ブナのような樹種や、隔離分布するヤツガタケトウヒ・オガサワラグワのような希少樹種などの遺伝的多様性の研究事例を紹介します。
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