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当支場管内の林業経営の当面する問題のうち、とくに国有林、民有林に共通するものとしては、近時の林業労務のひっぱくや、老令化、女性化にある質的低下など、労働事情の悪化があげられる。
この情況は、さいきんいちだんときびしくなり、とくに里山や近郊林業をおおくひかえた管内の林業地の林業経 営にとって緊迫の問題となっている。
このことは、構造改善事業などの林業政策推進のうえにも、また直積的には、植伐事業その他事業を遂行するう えにも大きな影響をおよぼしていることはいうまでもない。
試験研究機関としては、これらの情勢を前提条件として、こんごの試験研究およびそれにともなう技術開発の方 向を、どのように指向させるかは大きな課題となるであろう。そしてこれに対応するものとして、省力技術の開 発はいよいよ各方面から要請されるであろう。
もう一つの問題点としては、さいきん各地域に多発する傾向にある森林の病中獣害にたいする保護防除対策であ ろう。過去における大面積造林の結果として、それにともない森林の諸被害が誘発されている傾向がみられる。これらの対策も基礎的な究明を試験研究機関にゆだねられている。
当場としては、これら地域の社会経済的条件のもとでの諸要請に対応しながら、試験研究の推進、研究体制の整 備をおこない今日にいたったのであるが、ここに昭和43年度の関西支場年報を刊行するにあたって、これらの諸 要請にいくぶんでも近づいてゆく経過のあとを概観していただき、またつねづね研究推進にご指導ご援助をたま わっている方々にたいし、当支場の研究の一年間の足跡をご理解していただければさいわいである。
昭和44年9月
林業試験場関西支場長梅原博
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