ここから本文です。
減少化がすすむブナ林(滋賀県伊香郡余呉町針川)研究資料p.39
いわゆる「林野三法」の成立を受け、平成8年5月27日には、林野庁及び林業関係団体による「林野三法に基づく施策の推進会議」が設置・開催され、三法毎にプロジェクトチームも構成され、今後の取り組みとスケジュールが示された。これら三法のうち、森林総合研究所に直接関係するのは「木材の安定供給の確保に関する特別措置法」であり、その中で国産材製品生産体制強化対策として「木材加工技術開発目標」が掲げられ、森林総合研究所には、研究の強化と民間企業・都道府県からの相談への組織的対応が求められている。このような現状に鑑み、森林総合研究所では「地域林産研究支援センター」の設置が検討され、当支所においても関西地域に対応した窓口のあり方について、検討が開始されている。
さて、関西地域では、古くから都市化が進むとともに、かなり早い時期から人工林化が進められ、北山、吉野、尾鷲などの優れた先進林業地帯が形成されるとともに、中国・北陸地域に代表される戦後造林による並材生産地帯が共存している。このような地域特性に応じて、平成7年度も、まず「風致林・都市近郊林を中心とする森林の機能解明」については、風致林・都市近郊林生態系の機能、都市近郊林の水土保全機能、森林の風致及び環境形成機構、森林生態系の維持・遷移機構等の解明に係る試験研究が行われた。次に、「多様な保続的林業経営と施業技術の体系化」については、多様な森林施業技術と森林の生物害管理技術の高度化、及び保続的林業経営方式の体系化に係る調査研究が実施された。また、「森林機能の総合化手法と地域森林資源管理手法の確立」については、森林資源の総合的利用と地域森林資源管理計画手法の開発、並びに地域森林・林業と気候変動の関連解明に関する調査研究が行われた。
この年報には、まず冒頭に「研究課題一覧表」が掲げられ、この表の順に実行課題ごとの「試験研究の概要」が記述されている。これらの試験研究の中から主要な21課題を取りあげ、その結果を「主要な研究成果」として詳述した。次に「研究資料」には、近畿圏7府県に存在するブナ林を対象にして、デジタルデータや図面データ等により考察した「近畿地方のブナ林の分布状況について」、並びに高野山国有林のスギ・ヒノキ収穫試験地における長期間の調査結果を取りまとめた「紀州地方高齢級人工林の林分成長—高野山スギ・ヒノキ収穫試験地定期調査報告—」を掲載した。また、平成7年10月に開催した当支所の研究成果発表会の「記録」として、「地球温暖化と森林生産力の予測について—研究の現状と問題点—」、及び「“スギ黒心"その発生と対策」の要旨を収録した。これらの内容について、種々ご検討いただき、忌憚のないご意見を賜れば幸いである。
森林総合研究所関西支所は、来年には開設以来50年の節目を迎える。これを契機に、当支所が地域に開かれた研究所として、今後なお一層、関西地域の各種の研究機関や行政機関と、密接な連携を図りたいと考えている。関係各位の絶大なるご協力、ご支援をいただきたく、心からお願い申し上げたい。
平成8年9月
森林総合研究所関西支所長陶山正憲
一括版のpdfファイルはこちらです。年報第37号(平成7年度)(PDF:4、821KB)
Copyright © Forest Research and Management Organization. All rights reserved.