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更新日:2023年4月26日

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ただいま満開の「キリ」~林木遺伝資源として保存される中国産キリ属~

令和5年4月26日

4月初旬、林木育種センターの駐車場近くに植えられているキリ属の木々が開花しました。外国産の遺伝資源として場内で保存されているこの個体は日本国内でよく見かけるキリに比べて花は大ぶりで、白く華やかな印象の花を咲かせます。同じ地番に植栽された別の個体は1週間ほど遅れて開花が始まり、紫色の花を咲かせて現在満開です(図1)。その一方で、花芽はまだ固く丸いままで、開くそぶりもみえない個体もあります(図2)。

タンスなどの家具材に使われるキリはキリ科キリ属の落葉高木で、成長の早い有用樹種として昔から利用されてきました。中国を分布の中心に約7種が知られており、国内のキリ属は中国原産とする帰化植物と考えられています。キリ属は容易に雑種を作るため、国内には多くの種間雑種が存在しているようです。現在、宇都宮大学の逢沢研究室と共同で日本国内で生育する複雑なキリ属の実態をDNAマーカーによって明らかにする研究を進めています(長沢ら 2023)。

林木育種センターでは林木ジーンバンクとして中国産の種子由来とされるキリ属を11個体保存しています。これらのサンプルを含め、全国から集められたキリ属の個体について詳細な遺伝解析が進められています。葉緑体や核DNAの解析から、林木育種センターで保存するキリ属は日本でみられるキリとは明確に異なる複数の種からなることがわかってきました。花の形態や咲く時期の違いは、こうした種類の違いによるのかもしれません。

日本国内に多い、いわゆる「キリ(Paulownia tomentosa)」は中国系のキリ属に比べて開花が遅く、5月が見頃のようです(図3)。みなさんの周りにもフライング気味で開花している「キリ」はありませんか?それはもしかしたら別の樹種に由来する個体かもしれません

(育種部 育種第二課)

※長沢和,木村恵,逢沢峰昭(2023)国内でみられるキリ属種の遺伝的系統と遺伝的多様

第134回⽇本森林学会⼤会学術講演要旨集:P-206

https://www.forestry.jp/content/images/2023/04/森林学会大会講演集134_冊子版.pdf

図1林木ジーンバンクで保存されている外国産キリ属の花冠
図1 林木ジーンバンクで保存されている外国産キリ属の花冠。

 

図2同じ地番に植えられた3種類のキリ属
図2 同じ地番に植えられた3種類のキリ属。最も早く開花し大ぶりな白い花冠を付ける個体(左上部)
とほどなく紫の花を開花させた個体(右上部)。下中央の個体のつぼみはまだ固い状態。

 

図3キリの花序
図3 キリ(Paulownia tomentosa)の花序。(林木育種情報No.16(2014)より。大谷雅人画。)
https://www.ffpri.affrc.go.jp/ftbc/business/issue/documents/no16-8.pdf

 

ただいま満開の「キリ」~林木遺伝資源として保存される中国産キリ属~(PDF:619KB)

 

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