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更新日:2016年1月29日

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上智大学「グローバル社会に対応する女性研究者支援」プロジェクト

テーマ:「米国科学振興協会(AAAS)会長Alice Huang博士来日記念特別講演会」

 日時  2011年10月7日(金曜日)
 場所 上智大学2号館17階 国際会議場
 主催 上智大学、(独)理化学研究所
参加者 川元 スミレ 

 

参加報告

10月7日、上智大学において、Alice S. Huang博士(カリフォルニア工科大学、米国科学振興協会(AAAS)会長)による講演「科学技術のための外交と多様性」に出席した。講演摘要原本と訳を文末に示す。Huang博士は、中国系アメリカ人のご両親に「何であろうとあなたの望む通りになれるんだよ(you can be whatever you wanna be)」と幼少期から愛を注がれて成長され、現在、米国を代表するオピニオンリーダーを務められている。私達がこれから留意していく課題を、以下のように整理された。

  1.  Make own work visible(自分が価値のある仕事をしていることを見える化する)
  2.  Study Institutional culture(組織の文化をよく研究する)
  3.  Use support program & participate in the community(サポートプログラムを活用しコミュニティーに参加する)
  4.  Commit to education & empowerment of each other(女王蜂にならずにお互いの啓蒙啓発、お互いに能力を高めることに専念する)
  5.  Join professional organization(プロフェッショナルなボランティア団体等に参加する)
  6.  Ask for help(助けを求める)

書道におけるバランスとハーモニーが大切であるように、何事もバランスとハーモニーを無くしては成り立たない、教育における多様性は、革新的な新しいアイデアを生み、自由を生み出す、とのことであった。
さらに、Huang博士は、かすかな微妙な差別(subtle discrimination)について、「逆差別」に関する質問が出たときに言及された。個人的に、私達が直面する本質的な問題であると考えるため、本質疑応答部分を全逐語訳で示す。米国で逆差別を経験した方も、そうでない方とも、博士の回答を共に考えてまいりたい。

質問:(略)私はアメリカで働いた時に、自分のキャリアが逆差別によって苦しめられたように感じました。だから日本に戻ってきたわけではありませんが、 最近では日本でも似たようなことが起こりだしたのではないかと思います。(略)早急に解決すべきことではないのですが、そのような逆差別についてどう思われますか?

回答:あなたの質問で思い出しました。何年か前、私の隣に座っていらしたスウェーデン国王からの質問です。

スエーデン国王:「Huang博士、あなたはフェミニストと伺っています。私はよくニューヨークに行きます。そしてそのような方々(フェミニストのロールモデルのような女性)とデートするのが好きです。」(これは国王がご結婚される前の事です。)「ところで、(相手方の)男性の方々にも会います。彼らは、給料は彼女達より少なく、利用され、彼女達に短期間で捨てられます。このような差別については、あなたはどのようにお考えですか?」

Huang博士:「あなたはリンゴとオレンジを比較されています。両者はとても異なる状況にあるのです。

あなた(質問された方)がアメリカで経験された事は、本当かもしれません。つい最近の、米国科学財団の労働力報告(Man power report of National Science Foundation)分析結果によると、プロフェッショナルな仕事に就いた人達、アジア系アメリカ人のなかで、アイビースクール(Ivy schools, ハーバード、プリンストン等の私立名門校)、すなわち一流大学出身者と、その他のアイビースクールでない一流大学以外の出身者を比較すると、彼らは、実際に、雇用および昇進の面で差別されていた事がわかりました。私はアメリカ合衆国では混みいった問題があると考えます。つまり、ジェンダーへの偏見、差別は 微妙でとてもわかりにくいのです。気持ちを正直に言う事ができなくなっている今日、古いアイデア、「女性が先ではいけない」とか、「女性は男性ほどスマートでない」とかは不適当で言えない今日のほうが、巧妙な見えにくい差別が発生しています。そして、このような微妙な差別の方がもっとつらい、もっと実際に戦いにくいのです。

かつて、私は、サイエンスの分野で、男性と変わりなく男性の考える事を考えてきて、同僚に子供ができた後、サイエンスに戻らないのは仕事がしたくない言い訳なんだと思い、自分は女性としては例外なのかと思っていました。しかし、最初の子の時に、赤ちゃんを育てる女性がどんなふうになるか、つらいほど体験しました。ホルモンの変化、自分でも自覚できないほどの、いいようのない激情(hormonal-pop)にショックを受けました。「この子といっしょに家にいて授乳したい(to want to stay home to be with the baby to be breastfeed-ed)」と心から強く思ったのです。ですから自分を常に仕事に引っぱり戻してくれる研究室かなかったら、今の私の状況はありません。ですから、女性がサイエンスの仕事をできないのではなく、ホルモンの違いであることを自覚しました。またその違いをむしろ役立てるべきだと。

講演摘要
Diplomacy and Diversity for Science and Technology
Alice S. Huang, Ph.D. California Institute of Technology and the American Association for Advancement of Science, United States.
Asia is designated to play an important role in science and technology in the near future. In fact, there is a need for Asia to contribute to solving many problems facing out planet. There is wide recognition by major Asian nations that their own capabilities in science and technology hold the keys to success and insure a prosperous future. Governments are committing money and support as well as building more research institutions. But money and buildings will not be enough. There has to be a “cross roads” culture for cooperation/collaboration, not just within a country but also across national boundaries. Science diplomacy can foster such a culture. In addition, for science and technology to be successful there has to be innovative, out-of-the-box ideas. Such thinking is usually dependent on a diverse work force and interactions among different disciplines.
Within Asia Japan has a vital role to help insure that Asian science and technology efforts lead to benefits for mankind. Although Japan has a rich culture, solid economic base, and fundamentally strong institutions for the support of science and technology, there are challenges that it faces before it can exercise that leadership and provide much needed coordination.
Presentation, Japan, Oct. 2011 (原文)

科学技術のための外交と多様性
Alice S. Huang博士、カリフォルニア工科大学、米国科学振興協会(AAAS)会長
アジアは、近い将来、科学技術で重要な役割を果たす方向に向かっています。実際、地球が当面している多くの問題を解決するためにアジアは貢献する必要があります。主要なアジア諸国は、自国の科学技術の能力が成功の鍵であり、未来の繁栄を保障すると認識しています。政府は、研究組織を構築すると共に、研究費と援助を約束しています。しかし、研究費と組織だけでは十分ではありません。協力/連携のためには、単独の国内にだけにとどまらず、国境を越えて文化が交差しなければなりません。科学外交は、そのような文化的素地を育成することができます。さらに、科学技術が成功するためには、革新的で、独創的な考えがなければなりません。そのような考えは、通常、多様な労働力及び異なる学問分野の相互作用に依存します。
アジアの中で、日本は、アジアの科学技術への努力が人類のための利益を生み出すように先導する重要な役割を持っています。日本には、科学技術をサポートするための豊かな文化的素地、しっかりした経済基盤及び強力な組織があり、日本は当面する問題にチャレンジし、その後、リーダーシップを発揮して、必要な協調関係を提供することができます。
来日記念公演、2011年10月(訳文)

木材改質研究領域 機能化研究室 川元 スミレ: 記

 

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