ここから本文です。
令和2年11月2日、森林研究・整備機構創立115周年式典において、以下のとおり理事長表彰を行いました。
業績名 |
市販木製食器へのセルロースナノファイバー(CNF)配合下塗り塗料採用達成 |
---|---|
受賞者 |
下川 知子(森林資源化学研究領域 チーム長) 石川 敦子(木材改質研究領域長) |
受賞要旨 |
セルロースナノファイバー(CNF)は、大手製紙会社でこぞって生産され、軽量、高強度、高粘度といったそれらの特徴を生かした様々な製品が社会に浸透しつつある。恒久的な生産設備を持たない森林総研が、それら企業に伍してCNFを社会実装するために、受賞者らは製紙会社がその設備上生産が困難な極低粘度のCNFを開発し、その出口を木材用塗料のうち上塗り用塗料ではなくあえて下塗り用塗料に定め、さらに木材の退色抑制機能を付与して製品の価値を高めた。これらの総意工夫の結果、その塗料は市販木製食器に採用され、橋渡し成功例の一つとして法人評価をAへ導いた。この受賞者らの功績は、高く評価できる。 |
業績名 |
トドマツ人工林主伐後の低コスト更新技術の開発と普及 |
---|---|
受賞者 |
トドマツ主伐後天然更新技術研究グループ 代表 石橋 聡(北海道支所 研究専門員) |
受賞要旨 |
北海道の人工林面積の半分を占めるトドマツは、その過半が利用期を迎えており、伐採後の着実な再造林を進めるために低コストの更新方法が望まれている。 受賞者の研究グループは、更新初期コストの大幅な低減が期待できる天然更新に着目し、トドマツ人工林主伐後の植栽に代わる更新方法として「トドマツ天然更新」と「地がきによるカンバ更新」を施業に取り入れるための技術開発に取り組み、施業方法の要点を明らかにした。 研究成果は学術論文として公表するとともに、成果普及用のマニュアルを作成して北海道の林業関係者に配布し、その内容が森林管理局での施業に取り入れられるなど、北海道での低コスト再造林に貢献する成果として高く評価できる。 (トドマツ主伐後天然更新技術研究グループ 石橋 聡、北尾 光俊、原山 尚徳、古家 直行、上村 章、韓 慶民、伊藤 江利子、橋本 徹、相澤 州平) |
業績名 |
国産トリュフの栽培化に向けた取り組み |
---|---|
受賞者 |
木下 晃彦(九州支所 森林微生物管理研究グループ主任研究員) 小長谷 啓介(きのこ・森林微生物研究領域 微生物生態研究室主任研究員) 古澤 仁美(立地環境研究領域 養分動態研究室長) 野口 享太郎(東北支所 チーム長) 下川 知子(森林資源化学研究領域 チーム長) |
受賞要旨 |
我が国における、食用として有望な2種のトリュフの分類学上の位置づけを確定するとともに、それらの香り成分を明らかにした。さらに、これらトリュフの発生する土壌環境や生育に適した樹種、成長に有効な栄養条件を明らかにし、それらの環境を再現した圃場でトリュフの定着に成功した。本研究の功績は、我が国におけるトリュフ人工栽培技術の確立に向けて大きく貢献した。 |
業績名 |
地域に応じた森林管理に向けた多面的機能の総合評価手法の開発 |
---|---|
受賞者 |
山浦 悠一(四国支所 森林生態系変動研究グループ 主任研究員) 玉井 幸治(森林防災研究領域長) 松浦 俊也(東北支所 森林資源管理研究グループ 主任研究員) 山田 祐亮(森林管理研究領域 資源解析研究室 研究員) |
受賞要旨 |
受賞者らは交付金プロジェクト「地域に応じた森林管理に向けた多面的機能の総合評価手法の確立」において、森林が有する10種類の機能を林種と林齢の関数として評価するモデルを開発した。これによって林業活動、ひいては将来の森林管理による森林の多面的機能の変化が予測可能になり、求められる機能を十分に発揮する森林を目指す適切な森林管理計画の策定に大いに役立つと期待される。 以上の業績は多様な分野の研究者が協働して研究を進めた結果であり、プロジェクトメンバー全員の努力のたまものである。その中でもプロジェクトの中枢を担った受賞者一同の貢献は非常に大きく、高く評価できる。 |
業績名 |
森林保険部門と研究開発部門との相互連携による森林保険業務の高度化及び森林気象害リスク評価等に関する研究の発展と機構内連携への貢献 |
---|---|
受賞者 |
内海 和徳(森林保険センター 保険業務部 保険業務課長) 津田 元(森林保険センター 保険業務部 保険業務課 課長補佐) 鈴木 覚(森林災害・被害研究拠点長) 玉井 幸治(森林防災研究領域長) 髙橋 正義(森林災害・被害研究拠点 チーム長) 齋藤 英樹(森林管理研究領域 資源解析研究室長) 勝島 隆史(森林防災研究領域 十日町試験地 主任研究員) 吉藤 奈津子(森林防災研究領域 気象研究室 主任研究員) 安田 幸生(企画部 研究企画科 企画室長) 齊藤 哲(関西支所 地域研究監) 後藤 義明(森林防災研究領域 研究専門員) 宮下 彩奈(森林災害・被害研究拠点 任期付研究員) |
受賞要旨 |
森林保険センターと森林総合研究所は、相互に連携して森林保険部門が有するデータと研究開発部門が有する森林災害の専門的知見を活用し、気象条件と被害発生とを関連付ける「物理モデル」を開発し、リスク評価を行った。さらに、気象害の種別判定、ハンドブック「写真でみる林木の気象害と判定法」の刊行やUAVを活用した損害調査方法の実用化など、森林保険業務の高度化に貢献した。 また、令和2年2月12日に「森林気象害リスク評価シンポジウム」を開催し、成果の報告を行ったところ、行政担当者、研究者、森林・林業関係者に加え、建設業や民間損害保険会社の方々、個人等、約150名の幅広い層からの参加を得られた。アンケートでは9割以上が「新たな知見が得られた」、「満足している」との回答であり、気象害リスクに関する知見の普及、森林保険制度のPRに貢献した。 このように森林保険部門と研究開発部門との相互連携により、森林保険業務の高度化及び森林気象害リスク評価等に関する研究の発展と機構内連携の推進等に大きく貢献したことから、その功績は高く評価できる。 |
業績名 | 津波災害を想定した海岸林基盤造成のための技術的指針の提言 |
---|---|
受賞者 |
海岸盛土研究グループ 代表 野口 宏典(森林防災研究領域 気象害・防災林研究室長) |
受賞要旨 |
2011年の東日本大震災によって、東北地方の太平洋沿岸部は津波によって甚大な被害を受けた。津波被害を受けた海岸林の観察から、海岸林の防災力を高めるには地下水の影響を低減することが重要であると認識されたことを受け、盛土造成を伴った海岸林の整備が全国で進められた。しかし、このような大規模な基盤盛土上での森林造成は過去に例が無く、植栽木の定着と健全な成長を確保できる盛土造成のための技術開発が必要となった。候補者らの研究グループは、被災直後から交付金プロジェクト等による一連の研究を通じて、根系成長と土壌硬度との関係解明、広葉樹を含めた樹種選択のための樹木根系発達様式の研究などの幅広い研究を行い、海岸盛土の造成を行う行政部局に対して、研究成果をもとにした技術の提供と多くの助言を行ってきた。研究成果は、盛土上の海岸林整備の技術指針として広く活用され、基盤造成技術の向上に大きく貢献した。これらの成果は、海岸林整備だけでなく、近年注目されている社会空間への生態機能の導入を目的としたグリーンインフラの実現に向けた、具体的な取組としても重要な意味を持つものである。海岸林の造成が急ピッチで進む中で、現場と連携しながら、このような未開拓分野で実用化につながる成果を挙げたことは高く評価できる。 (海岸盛土研究グループ 野口 宏典、小野 賢二、篠宮佳樹、太田 敬之、萩野 裕章、鈴木 覚、大谷 達也) |
業績名 |
「令和元年台風第19号の暴風雨による災害」に伴う宮城県林道災害査定関連業務への支援 |
---|---|
受賞者 |
相澤 喜浩(森林整備センター東北北海道整備局長) 佐藤 永三(森林整備センター農用地業務室 参事) 廣川 厚(森林整備センター農用地業務室 専門員) |
受賞要旨 |
令和元年10月に発生した台風19号は、東北地方に多大な被害を及ぼし、被災した市町村では住民の生活復旧作業が優先され、被災した林道の復旧調査が滞る状態であったため、整備センターに支援要請がなされた。 整備センターでは、要望に直接対応できる部署が無い状況であったが、林道及び農道の災害復旧に関する知見を有する職員を被災地支援の一環として林野庁、東北森林管理局、宮城県から構成された「合同支援チーム」に派遣し、地元の若手職員に被災地の調査方法等を指導しながら支援業務を遂行した。 このことは、近年自然災害等が多発する中にあって、円滑な森林再生・林業復興に寄与するものであるとともに、被災地支援について関係機関が組織の枠を超えて協力するモデルケースとなり、今後の地域貢献への道筋を示した意義は大きく、その功績は高く評価できる。 |
業績名 |
「分収造林事業生物害防除(シカ害)実施要領」の制定と「シカ害防除マニュアル」の作成によるシカ害防除に関する技術開発及び普及 |
---|---|
受賞者 |
渡邉 康文(森林整備センター 森林業務部 森林事業課長) 吉川 雄己(森林整備センター 森林業務部 森林事業課 課長補佐) |
受賞要旨 |
これまでのシカ害防除については、被害の状況等に応じ、整備局毎(地域毎に)に防除方法等を定め実施していたが、シカ害の被害が全国的に拡大・激化している状況を踏まえ、全国で統一した防除方法の選定手順について基準を設けるとともに、標準規格と設置基準等を作成し、全国のセンター職員が統一した見解をもってシカ害防除に当たることができるよう要領を制定した。 また、マニュアルの作成にあたっては森林総合研究所の研究成果や助言を踏まえるなど、研究部門との連携を図り、写真や図説によりわかりやすくまとめ、現場においてすぐに活用できる内容となっている。 このことは、今後のシカ害防除において効率的かつ効果的な技術開発であるとともに、全国の林業関係者への普及にも努めておりその功績は高く評価できる。 |
業績名 |
用土を用いない画期的なスギさし木増殖技術の開発 |
---|---|
受賞者 |
栗田 学(林木育種センター 九州育種場 育種課 育種研究室長) 久保田 正裕(林木育種センター 九州育種場 育種課長)大塚 次郎(林木育種センター 九州育種場 育種技術専門役) 倉本 哲嗣(林木育種センター 育種部 育種第一課長) 近藤 禎二(林木育種センター 元育種部長) 福山 友博(林木育種センター 遺伝資源部 保存評価課 保存調査係長) |
受賞要旨 |
スギのさし穂を用土にさすことなく、空気中に露出するように立て、定期的にミスト散水することによって発根させる技術を開発し、特許を取得した。本手法では、発根に用土を必要としないため、さしつけのための用土の準備等が不要となり軽労化に繋がるとともに、苗木の発根状況を確認しながらさし穂のコンテナへの移植を行うことでさし木苗生産の効率化及び山行き苗木生産コストの縮減につながるものである。本成果は、林業経営でコスト及び労働負荷の軽減が求められている中で、持続可能な森林経営に貢献する大きな功績である。 |
関連リンク
お問い合わせ
Copyright © Forest Research and Management Organization. All rights reserved.