更新日:2021年12月24日
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1.受賞名 | Plant Species Biology Best Paper Award 2021(受賞日:2021年12月5日) |
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2.受賞者の氏名、所属 |
森 英樹(樹木分子遺伝研究領域) 上野 真義(樹木分子遺伝研究領域) 上條 隆志(筑波大学) 津村 義彦(筑波大学) |
3.受賞理由 |
木本性つる植物4種の林床および登はん個体のクローン構造を調査し、クローン成長プロセスを推定した結果を原著論文「Interspecific variation in clonality in temperate lianas revealed by genetic analysis: do clonal proliferation processes differ among lianas?(温帯性つる植物のクローン性における種間変異の遺伝解析による解明:つる植物によってクローン成長プロセスは異なるのか?)」としてPlant Species Biology誌にて発表したところ、つる植物が種によって水平方向および垂直方向へのクローン成長を使い分けていることを明らかにした点が学術的に高く評価された。 |
4.受賞対象研究の紹介 |
森林に自生する木本性つる植物は、樹木に取りつくことで自重を支えずに明るい林冠へ垂直成長(登はん)する特徴をもつ生活形である。また、つる植物の種によっては垂直成長だけでなく、林床で匍匐茎を水平方向にクローン成長(栄養成長)することで、宿主となる樹木(ホスト樹木)を探索し分布拡大することも経験的によく知られている。しかし、つる植物におけるクローン成長の研究例は少なく、クローン性の種間変異は不明である。また、つる植物種がどのように垂直方向および水平方向への成長を使い分けているのかも不明である。そこで、小川試験地(6ha固定調査区)において最も個体数の多いフジ、ツルマサキ、イワガラミ、ツタウルシの4種を対象として、樹木に取りつく見かけ上の個体(ラメット)をサンプリングし、DNAマーカーを用いて遺伝的に同一な個体(ジェネット)を識別することでクローン構造を明らかにした。また、林床での水平方向へのクローン構造を明らかにするため、様々な地形を含むベルトトランセクト内の小型ラメットを同様に分析しジェネットを識別した。その結果、ツルマサキ、イワガラミ、ツタウルシは、フジに比べてクローン成長由来のラメットは少ないことが明らかになった。また、ツルマサキ、イワガラミ、ツタウルシについては、林床の小型ラメットの親株と推定される樹木に取りつく大型ラメットは存在しなかったが、フジについては、林床の小型ラメットの周囲には必ず同一ジェネットの林冠層に到達する大型ラメットが分布していた。これらの知見は、フジは垂直成長した大型ラメットが後に水平方向にクローン成長したことに対し、他の3種は先に水平方向にクローン成長した後に樹木に取りつき垂直成長したことを示唆していて、つる植物が種によってクローン成長プロセスが異なることを示唆するものであった。 |
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