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更新日:2022年11月1日

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令和4年度理事長賞

令和4年11月1日、森林研究・整備機構創立117周年式典において、以下のとおり理事長表彰を行いました。

業績名

目に見えない森林の効用を科学的に見える化し森林の付加価値を産業につなげた

受賞者

髙山 範理(森林管理研究領域 森林空間利用推進担当 チーム長)

受賞要旨

第5期中長期計画では森林空間利用における健康・観光・教育分野からの具体的な付加価値の創造、産学官の連携、成果の社会還元の一層の推進が求められている。
受賞者は民間企業等とデジタル技術や照明技術を使った共同研究を行い、森林の風景・音・香りを屋内で再現した「デジタル森林浴」および「木漏れ日照射装置」が心身の疲労回復にもたらす科学的エビデンスを可視化し、森林環境要素の付加価値を産業に繋げた。これらの成果を基盤として、各々「Uralaa」「BioSHADOW」として製品・市販化され、福祉施設やオフィス等に導入されるなど、今中長期計画の「健康」分野の成果として重要な貢献をした。本成果は、プレスリリース、森林総研チャンネル・各種展示会等により広く発信が行われ、新聞等のメディアでも報じられた。

業績名 気候変動及び生物多様性の国際的取り組みの活動に対する科学的貢献
受賞者

森田香菜子(生物多様性・気候変動研究拠点 気候変動研究室 主任研究員)
古川 拓哉(生物多様性・気候変動研究拠点 生物多様性研究室 主任研究員)

受賞要旨

持続可能な世界を実現するために、国際社会においてさまざまな取り組みがなされてきたが、気候変動と生物多様性の分野では、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)と生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学—政策プラットフォーム(IPBES)が国際的な取り組みとして知られている。2022年4月にはIPCC第6次評価報告書第3作業部会報告書が、7月にはIPBES野生種の持続可能な利用に関するテーマ別評価政策決定者向け要約がそれぞれ公表された。受賞者は報告書作成に代表執筆者として参加し、それぞれの専門分野の知識を活かして報告書の科学的な根拠づくりに大きく寄与するとともに、研究所の国際的な知名度向上にも大きく貢献した。

業績名

林業と国土保全を両立するための山地災害リスク評価技術の開発および社会実装への取り組み

受賞者

多田 泰之(関西支所 森林環境研究グループ 主任研究員)
白澤 紘明(林業工学研究領域 森林路網研究室 主任研究員)

受賞要旨

受賞者は、「林業と国土保全を両立させる森林管理方法」を現場の技術者が適切に選択できるようにするため、林地の災害リスクに対応した林業を実施する適地適業の考え方を示し、災害リスクの詳細な地理空間情報などから構成される「山地災害リスク評価技術」を開発した。さらに林業技術者への普及のため、資料や動画として「災害リスクの基礎知識とリスク評価方法」を県職員と連携して作成した。作成した資料や動画は、林野庁、森林管理局、都道府県、市町村、森林組合、民間企業など林業に関わる様々な機関の職員を対象とした研修、依頼講演、技術指導において利用され、様々な形で実務へ活用された。これら受賞者は、技術開発と人材育成活動を通じて社会実装に多大な貢献をした。

業績名 沖縄・奄美世界自然遺産登録地における森林生態系管理手法の研究開発
受賞者

小高 信彦(九州支所 森林動物研究グループ 主任研究員)
阿部 真(多摩森林科学園 地域生態系保全担当 チーム長)
亘 悠哉(野生動物研究領域 鳥獣生態研究室 主任研究員)

受賞要旨 2021年7月「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」が、高い生物多様性を評価されて世界自然遺産に登録された。受賞者らは、2018〜2021年度に、環境研究総合推進費プロジェクト「世界自然遺産のための沖縄・奄美における森林生態系管理手法の開発」において、琉球大学や地域のNPO等と密接に連携をとりながら、絶滅が危惧される中琉球固有種の保全対策や順応的管理、老齢林の役割と生態系機能の評価や管理、外来哺乳類の影響と根絶・管理等に関する研究開発を行った。特に絶滅が危惧される固有種オキナワトゲネズミの分布回復のための回廊等の管理指針を提案し、米軍北部訓練場返還跡地における森林の生態系機能の評価、また、侵略的外来種フイリマングースやノネコの影響評価や管理指針のガイドラインを提案した。
業績名 ケニアにおける乾燥耐性郷土樹種(メリア・アカシア)の育種及びケニア森林研究所への技術移転
受賞者

宮下 久哉(関西育種場 育種課 育種研究室 主任研究員)
花岡 創(北海道育種場 育種課 育種研究室長)
松下 通也(林木育種センター 育種第二課 育種研究室 主任研究員)
生方 正俊(北海道育種場 研究専門員)
高濱 美樹(林木育種センター 指導普及・海外協力部 海外協力課長)

受賞要旨

乾燥気候下で森林減少等が指摘されるケニアにおいて、郷土樹種メリア及びアカシアの遺伝的構造の把握と保全戦略の検討、優良個体の収集、メリア遺伝率の推定及び遺伝的多様性に配慮した次世代選抜などの技術開発を行い、ケニア森林研究所に指導した。JICA技術協力プロジェクトで行われたこれら10年間の活動により林木の集団選抜の技術を移転し、種苗配布のための評価など実装段階に入った。
開発された系統は、その耐乾燥性や有用な材質に加えて選抜による優れた成長等が注目されており、森林造成、生計向上等への貢献が期待される。ケニア政府及びJICAからの高い評価の下に今年度よりプロジェクト3期目が開始され、更なる次世代開発や普及に取り組むこととしている。

業績名 AI技術を活用したトドマツの着果評価技術の開発とその技術開発の成果の社会実装化への取組
受賞者

花岡 創(北海道育種場 育種課 育種研究室長)

受賞要旨

北海道の主要造林樹種の一つであるトドマツの造林用苗木の生産にあたっては、採種園で生産された育種種子の確保が極めて重要である。受賞者は、林業イノベーションの一端を担う技術として注目される人工知能(AI)を活用し、UAVを用いて撮影したトドマツの樹冠画像から球果を検出・定量する物体検出モデルを開発した。これにより、従前より行われてきた着果調査を効率化及び高精度化することに成功すると共に、国有林との連携体制を構築し、採種園内で着果量の多い個体を評価し、一般に情報提供することまでを実現した。AIによる物体検出モデルを作製するだけでなく、その技術を事業化したことは、日本の林業分野では先駆的な事例である。

業績名 スギにおけるゲノム編集技術の開発とその高度化
受賞者 七里 吉彦(森林バイオ研究センター 森林バイオ研究室 主任研究員)
受賞要旨

ゲノム編集技術とは、生物が持つゲノムの特定のDNA配列を任意に改変する技術である。林木育種分野において、無花粉化や炭素貯留能力強化などの優良品種開発や、遺伝子機能解明への活用が期待されている。受賞者は、針葉樹では世界初となる、スギのゲノム編集技術を開発し、国際学術誌に公表した。そして、ゲノム編集による無花粉スギの作出や、本技術の改良によるゲノム編集効率の向上にも成功した。加えて、植物細胞におけるタンパク質の直接導入システムを開発して国際学術誌に公表すると共に、このシステムを利用して、ゲノム編集要素をスギ細胞に直接導入する高度化したゲノム編集技術を開発し、国際特許出願に至った。本成果についての研究施設見学会を実施し、アウトリーチ活動に貢献した。

業績名

感染症による制約下における業務継続に必要なICT環境の構築

受賞者

髙倉 利仁(森林整備センター 森林管理部 企画管理課 ICT推進係長)
遠藤 大士(森林整備センター 森林管理部 企画管理課 元ICT推進係)
朝倉 大志(森林整備センター 森林管理部 企画管理課 情報技術管理係長)
小林 俊大(森林整備センター 森林管理部 企画管理課 元企画係長)

瀧下 潤(森林整備センター 森林管理部 企画管理課 ICT推進係)

受賞要旨

新型コロナウイルス感染症による行動制限や三密回避の制約下で、通勤途上や所内での感染リスク低減が課題となっている。特に、森林整備センターは6整備局32水源林整備事務所を擁し、比較的人流が集中する地域に所在するなど感染リスクが高いため、リスク低減に効果的な在宅勤務を実現する仕組みの構築が急務である。従来、在宅などの外部から所内情報等への接続を排除する強固なセキュリティを構築してきたが、現状の構成を変更せず安全性を保持したまま、職員による外部からの接続を可能とする仕組みを短期間で構築し、在宅勤務を実現するとともにICT活用による業務効率化に大きく貢献した。

業績名 グリーンボンドの取得による社会貢献(環境改善に取り組む地方公共団体支援)
受賞者 森林保険センター 保険経理課
受賞要旨

森林保険センターでは安定的かつ効率的な資金の確保を図るため、独立行政法人通則法に基づき、資金運用を行っている。
令和3年度には、グリーンボンドとして発行される地方債を初めて取得した。グリーンボンドは、企業や地方公共団体等が地球温暖化対策や環境改善に資するプロジェクトに要する資金を調達するために発行される債券で、この取得により、地方公共団体のプロジェクト推進を支援した。
また、その発行体のホームページに投資表明投資家として森林保険センターが紹介され、SDGs達成に貢献しているとのPRに繋がった。
今後もグリーンボンドの取得といった取組を通じて、SDGs達成に貢献していくこととしている。

森林研究・整備機構役員と理事長賞受賞者の記念写真
令和4年度(2022年) 理事長表彰 受賞者

 

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