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国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所林木育種センターでは、天然記念物や巨樹、名木等の樹木を対象に、後継樹を増殖する「林木遺伝子銀行110番」を平成15年12月1日に開設しました。
この「林木遺伝子銀行110番」は、機関や個人等が所有する天然記念物や巨樹、名木、有名木等の樹木が高齢等で衰弱している場合などで、これらの機関等から全く同じ遺伝子を受け継いだ後継クローン苗木の増殖の要請があった場合に、さし木やつぎ木等の方法により後継クローンを増殖するものです。
増殖したクローン苗木は、所有者等へ里帰りさせるとともに、一部を森林総合研究所林木育種センターに遺伝資源として保存し、また、研究材料として活用します。
平成27年3月4日、つぎ木増殖した後継苗木18本が清水寺に里帰りしました。このウメ(紅梅)は、推定樹齢150年を超える境内現存樹木の中でも最古の部類に入る古木で、植樹時期は明治維新直後と伝えられています。当時、政府の神仏分離令に触発された廃仏毀釈運動が各地でおこり、清水寺も大きな打撃を受け、境内は非常に荒れた状態となりました。そこから復興を目指した寺関係者が植えた名梅といわれています。
重要文化財・仁王門は清水寺の総門にあたり、参詣者が来山し真っ先に目にする清水寺の象徴の一つであり、紅梅はその仁王門を色と香りで彩ってきた名木です。平成15年の仁王門解体修理に伴い樹勢が衰えた時期もありましたが、その後の保護管理により現在に至るまで毎年見事な花を咲かせています。
こうした中、清水寺からその子孫を長く後世に残したいとの要望があり、実施しました。
平成27年3月15日、つぎ木増殖した後継苗木4本が旧閑谷学校に里帰りしました。大正4(1915)年当時、農商務省林業試験場の場長であった白沢保美博士が中国を訪れ、孔子の墓所からカイノキ(楷の木)の種を採取し、播種・育苗しました。これが日本で初めて移入されたカイノキです。そのうちの2本が孔子ゆかりの地である旧閑谷学校に寄贈され、今年で樹齢100年を迎えます。
近年は温暖化等、異常気象の影響で紅葉の状態が悪く、その子孫を長く後世に残したいと旧閑谷学校顕彰保存会より要望があり、実施しました。
平成25年3月13日、つぎ木増殖した「近衞邸の糸桜」及び「市原虎の尾」の後継木9本が京都御苑に里帰りしました。
「近衞邸の糸桜」は、今出川御門から京都御所の朔平門へ進む右手の近衞家の屋敷跡にあり、孝明天皇も歌を詠まれている桜で、今回は八重紅が3本、白一重が4本里帰りしました。「市原虎の尾」は、下立売御門を入った左手にあります。この桜は、長く伸びた主枝に短枝が多数つき、開花すると枝全体が虎の尾の様に見えることから、大谷光瑞が「市原虎の尾」と名付けたと言われており、今回2本里帰りしました。「市原虎の尾」の親木は既に枯死したため、増殖しなければ1本も残らないところでした。
里帰りした後継木が、京都御苑で綺麗な花を一日も早く咲かせ、訪れる人に喜んでもらうことを願っております。
近衞邸の糸桜(八重紅) 近衞邸の糸桜(白一重) 市原虎の尾と花 里帰りの様子
平成25年2月19日、つぎ木増殖した後継木3本が延寿院に里帰りしました。この内2本は、早速延寿院本殿裏に住職、関係者により植樹を行いました。1本は延寿院の関係するお寺に寄贈されることになり、関係者で植樹が行われる予定です。
このサクラは、エドヒガン系のシダレザクラで推定樹齢380年で貴重な樹木であるため、名張市が天然記念物に指定しています。長年厳しい風雪に耐えた老木は、台風や強風等により枝の損傷や幹の腐朽が進行しており、過去に樹勢回復治療が施され改善も見られているが、完全な樹勢回復は厳しい状況とのことです。
将来、里帰りした後継木が親木と同じく綺麗な花を咲かせ、多くの人に愛されることを心より願っております。
延寿院のシダレザクラ 親木の前で後継木の里帰り 植樹の様子
平成25年2月12日、つぎ木増殖した後継木6本が高知県いの町に里帰りしました。同教育委員会は、後継木を将来に向けて大切に育てていくため、町立神谷中学校の生徒11名により成山和紙の里公園で植樹を行いました。
センダンは淡い紫色の花を咲かせますが、里帰りした「神谷の白花センダン」は、名前のとおり白い花を咲かせる極めて珍しいセンダンの品種で、牧野富太郎博士によって命名され、高知県の名木と町の文化財に指定されている貴重な樹木です。藩政末期(約200年前)に庄屋が自宅の屋敷に薬用として植えたと伝えられています。その後明治時代にこの地に小学校が設置され、数多くの児童を送迎し成長を見守ってきています。
里帰りした後継木が、親木と同じく綺麗な白花を一日も早く咲かせることを願っております。
神谷小中学校と白花センダン 植樹前の様子(神谷中学校の生徒) 植樹の様子
平成24年2月24日につぎ木・さし木増殖した後継木9本が京都御苑に里帰りしました。この桜は京都御苑の中立売御門から京都御所の精所門へ進む左手にあり、昔、後水尾天皇が桜の開花の季節に外出された時、あまりの美しさに魅せられて御車を返してもう一度その桜を愛でたことから、「御所御車返し」と名付けられたとされています。この桜は旗弁状の花弁も見られる八重咲きの品種で、毎年花の頃には沢山の人々に愛され見守られています。将来、親木と同じく里帰りした後継苗木が綺麗な花を咲かせ、地元に愛されることを願っています。
親木「御所御車返し」の開花の様子 親木の前で京都御苑管理事務所長へ後継木の里帰り
平成24年2月24日につぎ木増殖した後継木1本が招善寺に里帰りをしました。このハクモクレンは、推定樹齢400年の老木。樹高は9m。樹勢が弱ってきており、専門家による樹勢回復の治療を進めているとのことです。将来、親木と同じく里帰りした後継苗木が綺麗な花を咲かせ、地元に愛されることを願っています。
親木「招善寺のハクモクレン」 親木の前で後継樹の里帰り
平成22年12月9日、1本の後継樹が7年の歳月を経て里帰りを果たしました。このクロマツは、樹齢300年以上、高さ13m以上の古木で、鎌倉時代から続く2代目のマツであり、海辺にあるため古来から海上交通の目標とされてきました。しかし、平成14年頃から松枯れの大きな要因として問題視されているマツノザイセンチュウが原因で樹勢が弱り始めたため、樹木医による治療がなされましたが、治療の甲斐無く平成16年に枯死、伐採されました。しかし、伐採される直前に遺伝子の継承を望む鳥羽市教育委員会から後継樹の増殖依頼を受け、つぎ木を行い、遺伝子を残すことに成功しました。その後、つぎ木増殖した後継樹が平成16年の大型台風で大きな被害を受け、里帰りが遅れたものの、立派な後継樹として無事ご住職にお渡しすることができました。
平成23年2月には、地元関係者らによる盛大な植樹祭が行われ、西明寺の境内に植えられたとのことでした。ご住職や地域住民の皆様の想いを受け、3代目西明寺のクロマツとして大きく育ってくれることを願っています。
原木(切株)の上に置かれた後継樹 後継樹の受け渡し
平成22年3月4日(木曜日)、2年間の養苗期間を経て10本のクローン後継樹が東城町小奴可に里帰りを果たしました。里帰りした後継樹たちは、原木の周辺や地元の保育園、小学校などに順次植樹される予定です。当日は、生憎の雨の中での開催となってしまいましたが、報道機関関係者や地元の方々約20名が参加され、盛大に式を執り行っていただきました。小奴可地区では地元の方々が中心となって、要害桜に対する熱心な保護活動を展開されており、関西育種場としてこの活動に少しでも貢献できたことを喜ばしく思います。将来、原木と同様に綺麗な花を咲かせてくれることを期待しています。
原木と要害桜保存部長 後継樹の里帰りの様子
平成22年3月4日(木曜日)、小奴可の要害桜と一緒に2年間養苗してきた後継樹9本が里帰りを果たしました。植樹場所は少しでも皆の目にふれる場所をということで、総領町内にあるセツブンソウ群生地であるアースワーク河川公園が選ばれました。朝から降り続けていた雨はいつの間にかやみ、植樹祭が始まる頃には傘は必要なくなっていました。
下領家のエドヒガンの所有者であり110番制度を申請していただいた田邊さんに後継樹をお渡しした後、その内の1本を公園に植えていただき、残りの8本は場所を変えて植樹するとのことでした。原木は室町時代から生き続けている古木で、樹勢もかなり弱ってきており、このタイミングで後継樹をお返しできた事にほっとしています。後継樹が成長して花を咲かせるようになった時、隣に並んだ下領家のエドヒガンが一緒になって精一杯の花を咲かせてくれることを願っています。
古木の風格(原木) 丁寧に植えました 後継樹の里帰りの様子
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