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ホーム > 環境報告書2021目次 > 環境報告書2021-6-2 森林研究・整備機構の環境対応

更新日:2021年9月30日

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6. 環境への取組

環境保全の実績

環境負荷の全体像

森林研究・整備機構は、森林・林業・木材産業に係る研究開発や林木育種、水源林造成、森林保険が主な業務であり、調査・研究・技術開発によって森林・林業・木材産業に新たな価値を生み出し、社会の発展に貢献しています。
しかしながら、これらの業務を進める上でも、多くのエネルギーや資源を投入し、環境負荷の原因となる物質が排出されます。
このため、環境負荷の実態を正確に把握し、環境への負荷の軽減と良好な環境の創造への貢献に向け、たゆまない努力を続けていきます。

 

2020(令和2)年度の物質収支(インプット、アウトプット)

物質収支(インプット、アウトプット)を表す

※1:J(ジュール)はエネルギー量の単位で、1Jは0.239cal(カロリー)、1TJ(テラジュール)は1兆Jです。
※2:BOD(生物化学的酸素要求量)は、実験廃水処理施設(つくばのみ設置)からの排水量に、排水時のBOD実測濃度の年間平均値を乗じて算出しました。

 

地球温暖化の防止

森林研究・整備機構のエネルギーの7割を使用している森林総合研究所(つくば)は、エネルギーの使用の合理化等に関する法律に基づく「事業者クラス分け評価制度」※において、省エネ優良事業者として、2015(平成27)年度より引き続きSクラスの評価を受けています。
※「事業者クラス分け評価制度」とは、資源エネルギー庁が毎年度、省エネ法の工場等に係る措置の定期報告を提出する全ての事業者をS・A・B・Cの4段階へクラス分けし、省エネの取組が停滞しているBクラス以下の事業者に対して指導等の措置を行うものです。

省エネルギー対策
エネルギー使用量を削減し、地球温暖化防止に努めるため、森林総合研究所(つくば)に省エネ・省資源対策推進委員会を設置しています。
また、その他の事業所においても、それぞれに省エネルギーに関する具体的な対応策を検討し、各種の省エネルギー対策に取り組んでいます。これらの省エネルギー対策の実施結果と次年度の目標を環境委員会に報告し、活動状況の点検を実施するなど、更なる省エネルギー対策の検討を行っています。
今後も各種省エネルギー対策の実施や施設・設備の改修及び運用改善などを行うとともに、職員の省エネルギー意識の高揚に努めるなどにより、省エネルギー対策を推進していきます。

2020(令和2)年度に行った主な省エネルギー対策
・夏季及び冬季の空調・照明・研究施設等の節電対策を継続
・吸収式冷凍機の運転条件見直しによる節電
・送風機、ポンプの周波数変更による節電
・照明の照度変更による節電
・LED照明への更新促進

 

温室効果ガス排出量
2020(令和2)年度のCO2排出量は、前年度との比較では実排出量が6.6%(637トン)減少し、調整後排出量※は12.7%(1,261トン)減少となりました(図1)。
2013(平成25)年度比11%の削減を目標としていましたが、実排出量は21.6%(2,494トン)の削減、調整後排出量は23.1%(2,590トン)の削減となり、目標を達成しました。
冷暖房・照明管理の徹底、省エネ機器・低公害車の導入並びに夏季及び冬季の節電対策等の環境負荷軽減対策に取り組み、更なるCO2排出量削減率の向上に努めていきます。

二酸化炭素換算量の推移を年度ごとに表す
図1 エネルギー消費の二酸化炭素換算量の年推移

※「調整後排出量」は、電力に係るCO2排出量について、地球温暖化対策推進法(温対法)に基づき、京都議定書のクレジット等を実際の排出量から控除して算出した排出係数(調整後排出係数)を用いて算出しています。

 

エネルギー使用量
2020(令和2)年度におけるエネルギー使用数量について、事業所ごとの使用割合としてまとめて示しました(図2)。項目別エネルギー使用量は、冷暖房・照明管理の徹底をはじめとした節電の励行などの省エネルギー対策の推進により、前年度と比較して電力は1.5%減、都市ガスは4.6%減、ガソリンは7.4%減となり、機構全体の総エネルギー使用量は、対前年度比2%(3.9テラジュール)の減少となりました(図3、表1)。
なお、灯油は暖房運転の増、軽油はクリーンディーゼル車(CDV)の利用増により、増加したものと考えられます。
2013(平成25)年度比で7%の削減を目標としていましたが、16.1%削減となり、目標を達成しました(図3)。
今後も引き続き、室内温度管理の徹底により冷房運転時間及び暖房運転時間を短縮するなど、日常的な省エネルギーの取組に努めるほか、空調機器等の改修による省エネルギー化を計画的に実施するなどにより、エネルギー使用量の削減に努めていきます。

 

事業所ごとのエネルギー使用数量割合を表す
図2 2020(令和2)年度の事業所ごとのエネルギー使用数量割合

 

総エネルギー使用量を年度別に表す
図3 総エネルギー使用量

 

表1 項目別エネルギー使用量の年度別実績

エネギーの項目別使用量を年度別に表す

省資源

水資源使用量・排水量
2020(令和2)年度の研究開発部門における水資源使用量は前年度比2.1%(1,356 立方メートル)増加となりました。
上水使用量については、2013(平成25)年度比7%の削減を目標としていましたが、48.2%(61,730立方メートル)の削減となり、目標を達成しました(図1)。また、下水排水量も、前年度と比較して減少しました(図2)。

 

上水使用量を年度別に表す
図1 水資源使用量の年度別推移(研究開発部門)

※2013(平成25)年度は上下水道とも、配管の水漏れ等があり実績数量が多くなっている。

下水排水量を年度別に表す
図2 下水排水量の年度別推移(研究開発部門)

 

コピー用紙使用量

2020(令和2)年度のコピー用紙使用量(購入量)は、前年度比で3.7%(1,676kg)の削減となりました(図3)。
2013(平成25)年度比7%の削減を目標としていましたが、13.6%(6,917kg)削減となり、目標を達成しました。
コピー用紙使用量を年度別に表す
図3 コピー用紙使用量の年度別推移

廃棄物

2020(令和2)年度の研究開発部門における廃棄物の排出については、一般廃棄物・産業廃棄物・特別管理産業廃棄物の合計で前年度比では51.8%(139.7トン)の増加となりました(図4)。

廃棄物排出量を年度別に表す
図4 廃棄物排出量の年度別推移(研究開発部門)

 

2013(平成25)年度比7%の削減を目標としていましたが、123.8%の増加となり、目標を達成できませんでした。主な要因としては、台風、強風被害等による風倒木、伐採木の処分や金属くず、木くず等の処分の増加が考えられます。
研究開発部門から排出される廃棄物を削減するため、支障木の伐採や剪定の過程で発生する小径木、枝などを薪、ペレットに加工し、木質バイオマスエネルギーとして森林総合研究所(つくば)、関西支所、多摩森林科学園に設置した薪ストーブ、ペレットストーブで利用しています(写真1)。
また、職員用食堂から排出される生ゴミは生ゴミ処理機で堆肥化するなど、資源の再利用に努めています。さらに、可燃ゴミを減らすため、コピー用紙類の使用量削減とともに、古紙回収をはじめとしたゴミの分別・再資源化の徹底に努めています。

薪ストーブの写真
写真1 薪ストーブ(森林総合研究所多摩森林科学園)

 

グリーン購入

グリーン購入の取組
森林研究・整備機構は、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成12年制定)」(以下「グリーン購入法」という。)を推進するため、2001(平成13)年度より「環境物品等の調達の推進を図るための方針(調達方針)」を毎年度定め、環境への負荷の少ない物品の調達を積極的に進めています。

 

グリーン購入の目標
森林研究・整備機構が調達する物品は、「特定調達物品」を原則としています。「特定調達物品」以外の物品の場合も、エコマークの認定を受けているなど、環境に負荷の少ないものを調達するよう努めます。
OA機器・家電製品の調達では、より消費電力が小さく、かつ再生材料を多く使用しているものを調達するよう努めます。また、木材・木製品やバイオマス製品について率先して調達するよう努めます。

 

2020(令和2)年度の実績
各特定調達品目に関する調達については、調達目標値を100%と設定しました。一部については機能・性能上の必要性があり、基準を満たさない物品を調達せざるを得なかったものもありましたが、これらを除いては目標値を達成しました。
なお、特定調達率が100%に達していない品目については、グリーン購入法の趣旨を職員へ徹底し、引き続き環境物品等の調達に努めます。

表1 2020(令和2)年度の主な特定調達品目調達実績(機構全体)

主な特定調達品目調達実績を表す

実験廃水(森林総合研究所(つくば))

実験室等で薬品を使用した場合に生じる排出水は、実験原廃水として2次洗浄水まではポリ容器に貯留し、3次洗浄水以降の排水が実験流し台から下水管に排出されます。ポリ容器に貯留した廃水は、処理業者に委託して処理を行っています。
3次洗浄水以降は下水として排出されますが、森林総合研究所(つくば)の場合は実験系の廃水の量や薬品の使用量が多いため、廃水処理施設を設けています。研究室から流された3次洗浄水以降の廃水は実験排水管を経由し、一旦、廃水処理施設の原水貯留槽に貯留され、水質分析を行います。水質汚濁防止法、下水道法、つくば市下水道条例に基づく排水基準値内であることを確認後、公共下水道に放流しています。
なお、分析の結果、基準値を超えた場合には、廃水処理施設を運転して処理を行い、再度水質分析を行った上で、基準値内であることを確認してから放流しています。


実験廃水の公共下水道までのフローを表す
実験廃水の公共下水道までのフロー

 

化学物質の適正管理

化学物質によるリスクの低減
研究開発部門では、研究活動を推進する上で様々な実験を行っているため、多くの化学物質を使用しています。したがって、化学物質を適正に管理するとともに、労働安全衛生の確保、環境汚染の未然防止、環境負荷の低減を図ることは、私たちにとって重要な社会的責任です。
このため、化学物質等管理委員会や安全衛生委員会、危険物貯蔵所運営委員会等を設置し、関係法令の遵守や適正な取扱い・管理に向けた取組を推進しています。具体的には、化学物質管理システムを使用した化学物質の適正な使用数量等の管理を行い、化学物質の取り扱い時に守るべき事項等について、イントラネットに各種情報や注意点を掲載するなど定期的な注意喚起を行っています。
また、職場点検・職場懇談会での安全確認や、安全衛生関連ウェブサイトを開設して「化学物質の取扱い」について指導するとともに、リスクアセスメントを実施するなど化学物質の適正な管理・取扱いの徹底を図っています。

 

化学物質の把握(PRTR法)
「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(PRTR法)に基づき、毎年、特定化学物質の取扱量の把握を行っています(表1)。
2020(令和2)年度に取扱いのあった化学物質は、研究開発部門で122物質(うち特定第1種指定化学物質:7物質)、取扱総量は機構全体で1,592キログラム(うち特定第1種指定化学物質:49キログラム)でした。一定量を超えた場合には、事業所ごとの届出が必要となりますが、取扱量の多い森林総合研究所(つくば)でも第1種指定化学物質は総量587キログラム(いずれかの第1種指定化学物質1トン以上で届出が必要、特定第1種指定化学物質は総量38キログラム(いずれかの特定第1種指定化学物質0.5トン以上で届出が必要)で、いずれも届出の対象とはなりませんでした。

表1 PRTR法調査対象物質の年度別取扱量(機構全体上位5物質)

RTR法調査対象物質の年度別取扱量を表す

安全衛生への取組

労働災害を防止し、化学物質・危険物の管理及び遺伝子組換え実験、放射線業務を安全・適正に行うため、安全衛生委員会、危険物貯蔵所運営委員会、遺伝子組換え実験安全委員会、放射線障害予防委員会を設置して、職員の危険の防止、健康障害の防止、健康の維持増進等に努めています。
また、具体的な取組として、防災訓練や労働衛生に関する講習会等を開催しています。
今後とも、組織をあげて安全管理に関する教育・啓発による安全意識の向上を図るほか、施設・設備の改善等により災害の未然防止を図り、職員や来所者への安全・安心の確保に努めていきます。

交通安全講習の様子の写真
写真1 交通安全講習(森林保険センター)

防災訓練の様子の写真
写真2 防災訓練(森林総合研究所九州支所)

 

環境美化への取組

環境配慮基本方針における「日常生活における環境配慮」の一環として、最も身近な環境である職場の美化活動を通じて、全ての役職員の環境配慮に関する意識の向上を図ります。また、環境省が提唱する「環境月間」に合わせて、環境意識の向上や省エネ等更なる環境に配慮した取組を推進します。具体的には、構内道路・植え込み・建物周辺の清掃、研究室等で発生した不要物品などの整理等に取り組んでいます。
今後も、環境美化活動を推進し、環境配慮への意識向上に努めていきます。

構外清掃の様子の写真
写真3 構外の清掃(林木育種センター九州育種場)

構内清掃の様子の写真
写真4 構内の清掃(森林総合研究所(つくば))

 

木材利用の促進

森林総合研究所では、2015(平成27)年9月に「地球環境に優しい木材利用モデル事業所宣言」を行って以来、施設等の内装・外装、オフィス家具等だけでなく、薪・ペレットストーブの導入などあらゆる面で木材の活用を行ってきました。5年目を迎えた2020(令和2)年は、新型コロナ禍とも関連して木材利用を促進していますので、紹介します。
新型コロナウイルスの感染拡大防止対策として、人が密になる状況を回避する目的で、様々な会議がオンラインで実施されるようになり、一部会議室では利用環境を整える改修が必要となりました。その際、これまでの会議室に設置されていた壁のホワイトボードを撤去し、木質タイルを表面が凸凹になるように貼り合わせた、木の風合いを生かしたパネルに張替えました(写真1)。オンライン会議が頻繁に実施されるようになり、映像の背景として木の壁が映し出されることなどにより、多様な木質利用を多くの方に認知していただきました。また、セミナールームにおいてはブラインドをスギ材で作られたものにし、施設の見学に訪れたみなさんに、木の良さを感じていただいています(写真2)。さらに、木質の会議テーブルを増やすなどで木材利用を推進しました(写真3)。引き続き、モデル事業所として木材利用を積極的に進めるとともに、地球温暖化防止の観点からも社会に貢献できるよう努めてまいります。

木質タイルを貼り合わせたパネルの写真
写真1 木質タイルを貼り合わせたパネル

木のブラインドの写真
写真2 木のブラインド

木質テーブルの写真
写真3 木質テーブル


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