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ホーム > 環境報告書2021目次 > 環境報告書2021-7 事業活動における環境への貢献

更新日:2021年9月30日

ここから本文です。

7. 事業活動における環境への貢献

業務の推進

第4期中長期計画の概要

森林研究・整備機構は、森林・林業・木材産業分野が直面する課題に的確かつ効率的に対処するために研究開発を推進しています。我が国唯一の総合的な森林・林業の研究機関として国の施策、林業関係者及び国民のニーズに応えるため、重点課題ア「森林の多面的機能の高度発揮に向けた森林管理技術の開発」、重点課題イ「国産材の安定供給に向けた持続的林業システムの開発」、重点課題ウ「木材及び木質資源の利用技術の開発」、重点課題エ「森林生物の利用技術の高度化と林木育種による多様な品種開発及び育種基盤技術の強化」の4つの重点研究課題を設定し、研究開発の成果を積極的に発信して社会に貢献します。また、水源林の造成により水源涵養(かんよう)機能を強化し、土砂流出・崩壊の防止、二酸化炭素の吸収による地球温暖化防止など、森林の有する公益的機能の持続的発揮に貢献します。同時に、森林所有者の皆様が自然災害に備えるセーフティネット手段として、森林保険のサービスを提供します。

各業務とSDGsとのつながり

森林研究・整備機構は、森林の多面的機能の高度発揮と林業の成長産業化を推進し、次世代に向けた森林の保全や持続的利用に貢献するため、第4期中長期計画(平成28~令和2年度)において研究開発業務となる4つの重点課題、水源林造成業務、森林保険業務、ダイバーシティ推進の取組を遂行しています。これらはともに、SDGsの達成に貢献するものです。各業務とSDGsの目標とのつながりは下記のとおりです。

各業務とSDGsとのつながり

業務の成果

研究開発業務

研究開発業務では以下の4つの重点課題の研究に取り組むことで、緑の豊かさを守り、気候変動に関わる対策を進めつつ、産業の技術革新と基盤をつくり、すべての人に健康と福祉を提供するなど、SDGsの達成に貢献しています。

業務の説明
【重点課題ア】森林の多面的機能の高度発揮に向けた森林管理技術の開発

森林には、水源の涵養(かんよう)、山地災害の防止、気候変動の緩和、生物多様性の保全などのさまざまな機能があり、私たちの生活に多くの恩恵をもたらしています。健全な森林生態系がもともと持っている自己修復力を活かす森林管理を進めながら、森林に期待される多面的な機能を高度に発揮させてまいります。

令和元年台風19号により宮城県丸森町で発生した土石流災害 スギ成木の乾燥実験 シカ被害など森林の主な病虫獣害の防除技術

令和元年台風19号により
宮城県丸森町で発生した土石流災害

スギ成木の乾燥実験

シカ被害など森林の主な病虫獣害の防除技術

SDGs_icon15.13.3.17.9.1.7.11.6.14

 
【重点課題イ】国産材の安定供給に向けた持続的林業システムの開発

多様な生産目標に対応した森林施業技術、先端技術をとりいれた森林資源把握と管理手法、先導的な林業生産システムを開発します。また持続的な林業経営と木材流通・加工体制構築に向けた対策を提示するとともに地域に合った木質エネルギー等の効率的利用システムの開発に取り組みます。

 

低コストな再造林手法の開発 情報化施工による道づくり
低コストな再造林手法の開発 情報化施工による道づくり

SDGs_icon15.9.7.11.8.13.3.4

 
【重点課題ウ】木材及び木質資源の利用技術の開発

消費者ニーズに対応する材料や利用法の開発、大径材等需要が少ない木質資源の利用方法の開発を行います。また、セルロース、リグニン等木材主成分の有効活用や未利用抽出成分の機能を活かした新たな需要を創出するための技術開発を行います。

 

CLT(直交集成板)の製造実証装置 リグニン パウダー 改質リグニン ベンチプラント
CLT(直交集成板)の製造実証装置 リグニン パウダー 改質リグニン ベンチプラント

SDGs_icon9.15.12.4.7

 
【重点課題エ】森林生物の利用技術の高度化と林木育種による多様な品種開発及び育種基盤技術の強化

森林生物のもつ多様な機能を解明することにより樹木やきのこ等林産物の利用を積極的に進めるとともに、多様なニーズに応える森林づくりのための優良品種等の開発とこれらを早期に実現するための技術開発を進め、森林の機能発揮や林業の成長産業化に貢献します。

 

国産トリュフ人工栽培に向けた取組
国産トリュフ人工栽培に向けた取組
トドマツ20系統が初の特定母樹指定
トドマツ20系統が初の特定母樹指定

SDGs_icon9.13.15.3.4

 

業務の成果
気候変動に伴うスギ人工林の生産力の変化を全国規模で予測

温暖化は、スギやヒノキなどの人工林の成長にも大きく影響すると考えられていますが、多くの要因が複雑に絡み合っているため、人工林の生産力の将来予測はこれまで困難でした。そこで、森林の光合成や呼吸などを推定する計算式を組み込んだシミュレーションモデル(陸域炭素循環モデル)をスギ林用に調整することにより、将来の温暖化がスギ人工林の純一次生産量※に与える影響を予測し、全国1kmメッシュのマップを作成しました(左図)。その際、大気中の二酸化炭素濃度の上昇の影響も考慮しました。
その結果、二酸化炭素濃度が異なる5つの将来気候モデルでは、温室効果ガスの低排出、および高排出シナリオのいずれにおいても、スギ林の純一次生産量が増加すると予測されました(右図)(全国平均の比較)。この結果は、森林による二酸化炭素吸収量の評価や、林業分野における持続可能な木材生産を考えるうえで非常に重要な情報となります。
※純一次生産量:植物の光合成により大気から取り込まれる炭素量から、呼吸により消費される炭素量を引いたもの。

図 スギ人工林の純一次生産量とその変化の将来予測
図 スギ人工林の純一次生産量とその変化の将来予測

 

植物の多様性は水危機に強い土地をつくる

水はあらゆる生物にとって不可欠な物質です。しかし、世界的な経済成長によって水が不足するという、水危機のリスクが深刻になっています。通常、雨として降った水は、植物を潤し土壌を湿らせ、一部が蒸発散して大気に戻り、一部は地下水を涵養(かんよう)して、河川へと流出していきます(図)が、その過程では植物が水循環をコントロールしています。しかし、開発によって自然植生が単一農作物などの単純な土地利用形態(単作農林業)に改変されると水循環が単純化してしまい、突発的な豪雨などの極端な気象現象への対応力を弱めてしまう恐れがあります。このような植生の単純化は環境変化に対する土地の回復力を低下させることが危惧されます。この問題の解決には、機能や形質(葉の厚さ、気孔の開閉能力、根の深さなど)が異なる様々な種を混交して植栽し、意図的に種の多様性を高めることで水循環プロセスに多様性をもたせる「スマートデザイン」を取り入れた農林業の推進が考えられます。

図 自然植生と単作農林業での水の経路の違いの概念図
図 自然植生と単作農林業での水の経路の違いの概念図
自然植生は植物の多様性が高いため、降った雨の経路(濡れ、蒸発散、土壌中への浸透、地下水涵養(かんよう)、水流出)も多様性が高いのに対し、単作農林業では雨の経路も単純化される。その結果、たとえば渇水期における単作農林業の環境では地下水位(下の青い円盤)の低下が進み、植物の地下水利用が困難になる。

 

気候変動適応に向けた林木育種技術の開発(林木育種センター)

近年、気候変動は国際的にも大きな環境問題となっており、緩和策や適応策の検討が進められています。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第5次評価報告書(2014(平成26)年11月公表)において、気候システムの温暖化は疑う余地はないとされており、最も厳しい温室効果ガスの削減努力を行った場合においても想定される気候変動に対処するため、政府の「気候変動の影響への適応計画」(2015(平成27)年11月策定)及び「農林水産省気候変動適応計画」(同年8月策定)が策定されました。このような背景を踏まえ、森林総合研究所林木育種センターは、将来の気候変動下で我が国の人工林の生産性と健全性を維持する観点から、日本の主要造林樹種であるスギについて、気候変動が進んだ場合の環境下にも適応しうるようスギを品種改良するための育種技術の開発に取り組みました。

フィールドにおけるデータから環境ストレスに対する応答性を評価する技術の開発
気候変動に伴う気温上昇や無降水期間の長期化などが懸念されています。そこでスギの乾燥等の環境ストレスに対する系統(品種)ごとの応答性を評価するための技術開発に取り組みました。これまで蓄積された植栽試験地における成長データと、降水量や地形情報等から算出した水分指標との関係を解析することで、土壌水分等に対する各系統の環境応答性を明らかにする統計モデルを開発し、乾燥条件でも成長の低下が少ないスギ系統をスクリーニングしました。

温室におけるデータから環境ストレスに対する応答性を評価する技術の開発
また、温室内にて乾燥と湿潤の条件下で複数のスギ系統を育成し、乾燥ストレス下でのスギ苗木の応答性を評価する技術開発にも取り組みました。一般に植物は、乾燥ストレスの変化に応じて葉の気孔を開閉しますが、その気孔の開閉によって葉面の温度が変化することに着目し、赤外線サーモグラフィーを用いて気孔の状態を簡易に評価できる手法を開発しました(図1)。この技術を用いて、水やりを継続して育成した潅水区のスギと、途中から水やりをやめた乾燥区のスギを調査したところ、乾燥下において気孔をいち早く閉じる系統、逆に遅くまで気孔を閉じない系統など、スギの系統による乾燥ストレスへの応答性の違いを明らかにすることができました。

遺伝子発現量による環境ストレスを評価する技術の開発
一方、植物が環境によるストレスを受けている場合、そのストレス条件下で生命活動を維持するために様々な遺伝子の働き方の程度(発現量といいます)が通常の環境状態下とは異なっていることが考えられます。そのため、温室での乾燥試験と並行し同じスギの系統を用いて、乾燥および湿潤条件下での遺伝子の発現量、具体的には、mRNAの量などを比較する解析を行いました。これによりストレス条件下で遺伝子発現量が顕著に増加・減少する遺伝子を調べ、最終的に乾燥ストレスへの対応に関与する可能性が考えられる遺伝子を絞り込むことができました。この絞り込んだ遺伝子の発現量を解析することにより、乾燥条件下にあっても湿潤条件と同様の遺伝子発現を示すスギ系統を明らかにすることができました(図2)。またこのような系統は、乾燥条件下でも健全性を維持していました。一般的に遺伝子の発現は、植物の見た目が変化する前に大きく変化します。今回明らかにした遺伝子の発現量の変化を調べることで、いち早く乾燥に適応している系統を見つけることができるようになるものと考えられます。

このようにして開発した環境ストレスに対する応答性を評価する技術等を活用して多数のスギ系統について評価を進め、乾燥耐性に優れるスギ育種素材を19系統作出しました。今回開発した技術や育種素材は、今後の気候変動適応のための品種改良等に向けて活用されることが期待されます。

本研究の一部は、農林水産技術会議委託プロジェクト研究「気候変動に適応した花粉発生源対策スギの作出技術開発」(課題番号:16781353)で実施しました。

図1 乾燥ストレスに対する気孔応答により変化するスギの葉温
図1 乾燥ストレスに対する気孔応答により変化するスギの葉温
乾燥ストレス条件下でのスギ苗の応答性を赤外線サーモグラフィー等を用いて評価した。乾燥ストレスが生じていない試験開始時では、潅水(かんすい)区と乾燥区で違いは認められないが、試験が経過し、乾燥区において乾燥ストレスが生じると、潅水(かんすい)区よりも葉温が高くなる。

 

図2 潅水区と乾燥区における遺伝子発現の全体の傾向

図2 潅水(かんすい)区と乾燥区における遺伝子発現の全体の傾向
横軸と縦軸は、それぞれ遺伝子の発現量の全体の傾向を要約した値(主成分分析の第一主成分と第二主成分)を表す。一つの点は一つの系統を示し、青色の点は潅水(かんすい)区、赤色の点は乾燥区で生育した個体を示し、点の位置が近いほど遺伝子発現が類似していることを、離れているほど異なっていることを表す。

 

水源林造成業務

SDGs_icon6.12.13.15

業務の説明

洪水の緩和や水質の浄化に必要な森林の持つ水源涵養(かんよう)機能を確保するため、重要な水源地域にある民有保安林のうち、水源涵養(かんよう)機能等が低下した箇所において計画的に水源林を造成し、森林の有する公益的機能の発揮に資する役割を果たしています。

水源林造成事業

奥地水源地域の水源涵養(かんよう)上重要な民有保安林のうち、樹木のほとんど生えていない無立木地や低木がまばらに生育する散生地など水源涵養(かんよう)機能が劣っている箇所を対象に、分収造林契約に基づき、公的なセーフティネットとして森林を整備しています(これを水源林造成事業といいます)。

  • 事業の仕組み
    この事業は、造林地所有者が土地を提供、造林者が植栽・保育を行い、森林整備センターが費用の負担と技術指導等を行うという分収造林契約方式により共同して森林を造成しています。

事業の仕組みの相関図

  • 事業の流れ

【対象地】

無立木地

散生地 粗悪林相地

奥地水源地域の民有保安林で、無立木地、散生地、粗悪林相地等、人工植栽の方法により森林の造成を行う必要がある土地が対象となります。

矢印

 

【森林整備の過程】

植栽 保育 間伐

森林の機能が劣っている対象地に、既に存在する広葉樹等を活かしながら苗木を植え、雑草を刈り払い、生長して混み合ってきたら間伐します。

矢印

【未来に向けた森林づくり】

針広混交林

育成複層林

広葉樹等を活かしながら長伐期の針広混交林を造成していきます。

群状又は帯状の育成複層林誘導伐の実施により、複数の樹冠層を有する育成複層林を造成していきます。

 

業務の成果

1. 環境の保全に資する取組実績

水源林造成事業は、ダムの上流域などの水源涵養(かんよう)上重要な奥地水源地域の民有保安林のうち、土地所有者自身による森林整備が困難で木の生えていないような公益的機能が劣っている無立木地、散生地、粗悪林相地などで、土地所有者等と森林整備センターとが分収造林契約を締結し、公的なセーフティネットとして早期に水源林を造成する事業です。
これまでに、約49万ヘクタールに及ぶ水源林を造成し、計画的に保育を実施しています(写真1、図1)。これにより水源涵養(かんよう)機能はもとより、森林の持つ各種公益的機能を発揮させ、環境の保全に貢献してきました。
2020(令和2)年度においては、2,399ヘクタールの植栽などを実施しました。

水源林造成事業地の山とダム湖水面
写真1 池原ダム周辺の水源林造成事業地(奈良県吉野郡上北山村)

 

日本全国地図に水源林造成事業の契約地が緑の点で示されている

図1 水源林造成事業の契約地【2020(令和2)年度末】(※地図中の濃緑色の点の箇所が契約地)
水源林造成事業は、1961(昭和36)年から事業を開始し、現在までに沖縄県を除く全国に約49万ヘクタール(東京都と神奈川県の合計面積に相当)の水源林を造成してきました。
これまでに整備された水源林は、全国の民有保安林約500万ヘクタールの約1割を占め、地域の人々の暮らしを支えています。

水源涵養(かんよう)効果
●良質で豊かな水を供給
●洪水防止や水質の浄化
年間約30億立方メートルを貯水
(東京都で使う約2年分の水量に相当)

山に立木があり麓に河川など水源がある模式図
環境保全効果
●二酸化炭素の吸収
●酸素の放出・大気浄化
への寄与
年間約236万トンの二酸化炭素を吸収
(約167万世帯の年間消費電力の発電時に排出されるCO2量に相当)
山に立木があり日光の作用で森林が二酸化炭素を吸収し酸素を供給している模式図
山地保全効果
●土砂の流出・崩壊の防止
●災害に強い森林整備
毎年約8千9百万立方メートルの土砂の流出を防止
立木のない山では土砂流出・崩壊が起きている模式図
日本学術会議による「地球環境・人間生活にかかわる農業及び森林の多面的機能の評価について(答申)」(2001(平成13)年11月)では、全国の森林の持つ多面的機能の貨幣評価額は約70兆円/年です。これを全国の森林面積に対する水源林造成事業面積の割合により試算すると約1兆4千億円となります。一方、「水源林造成事業による公益的機能効果の試算」では、標準伐期齢未満の森林の機能量は林齢に比例して増加するとしていることや、保健・レクリエーション機能は試算していないことなど、日本学術会議の評価方法とは異なる部分があることから、効果額に差が生じています。
詳しくは、森林整備センターホームページ(https://www.green.go.jp)をご覧ください。

(1)森林整備の考え方
森林・林業基本法に基づき政府が策定した森林・林業基本計画では、水源林造成事業については「森林造成を計画的に行うとともに、既契約分については育成複層林等への誘導を進めていく。その際、当該契約地の周辺森林も合わせた面的な整備にも取り組む。」としています。
このため、森林整備センターでは、樹齢や樹高が異なった複数の樹冠層からなる森林を育成する施業(写真2)や、伐期を長期化し針広混交林を育成する施業(写真3)を推進し、森林の有する水源涵養(かんよう)機能等を持続的かつ高度に発揮させるため、森林造成を計画的に行うとともに、既契約地の契約を見直しています。また、流域保全の取組を強化する観点から、既契約地周辺森林も合わせた面的な整備にも取り組んでいます。

 

育成複層林の写真
写真2 育成複層林(大分県日田市)

針広混交林の写真
写真3 長伐期の針広混交林(宮城県黒川郡大和町)

(2)森林整備による地球温暖化対策
我が国では、2021(令和3)年度における森林吸収量の目標(2013年度比2.0%以上)達成のため、間伐等を推進することとしています(写真4)。
森林整備センターにおいては、2020(令和2)年度に約25千ヘクタールの除間伐を実施し、森林吸収量の目標達成のために貢献するとともに、約49万ヘクタールの水源林全体では、年間約236万トンの二酸化炭素を吸収し、地球温暖化対策にも大きく貢献しています。

 

林業機械を使い搬出用林業機械荷台に間伐材を積込む作業写真
写真4 間伐材の搬出状況(福島県郡山市)

 

2. 環境負荷の低減に向けた取組実績
業務の実施にあたっては、可能な限り地形、動植物、景観等への影響を緩和する必要があります。このため、路網の整備においては環境負荷の低い工法を採用し、主伐の実施においては伐採による公益的機能の一時的な低下を緩和させる小面積分散伐採を推進しています。

(1)丸太組工法による作業道の設置
水源林造成事業においては、作業効率の向上や林業労働者の就労条件の改善等を図るため、作業道を開設しています。
開設にあたっては、急傾斜地を避けるよう努めるとともに、急傾斜地等で構造物が必要となる場合には、循環再生資源である木材(丸太)を有効利用し、地形の改変量が少なく作業道の敷地としての潰れ地も小さい「丸太組工法」を採用することにより、環境負荷の低減に取り組んでいます(写真5、図2)。
森林整備センターでは、2020(令和2)年度に開設した514路線の作業道のうち、152路線で丸太組工法を採用しました。

丸太組工法の作業道が林内に開設された写真
写真5 丸太組工法(のり留工)による作業道(佐賀県唐津市)

 

丸太組工法の横断図
図2 丸太組工法(のり留工)による作業道のイメージ

(2)小面積分散伐採による主伐
2008(平成20)年度以降の主伐については、伐採時期を分散させ伐採面積を小面積に分散させる「小面積分散伐採」を推進しています。これにより伐採による森林の持つ公益的機能の一時的な低下を緩和させています(図3)。

【新植時~約50年後】
新植時に保残した広葉樹を活かしながら、植栽木を育成

新植時に散在してる広葉樹等が矢印後約50年後に成長した針葉樹に囲まれている模式図

 
【約50年後~約80年後】
植栽木が50年生~80年生になった段階で、広葉樹を残置しつつ、数回にわたって小面積分散伐採を導入し、伐採による公益的機能の一時的な低下を緩和

小面積を1~4回に分けて小面積伐採している模式図
*主伐後は造林地所有者が植栽を実施

図3 小面積分散伐採による主伐のイメージ

 

森林保険業務

SDGs_Icon6.13.15

業務の説明

林業は自然環境の中で営まれるため、気候変動に伴う自然災害や火災等の様々なリスクに直面しており、ひとたび災害に見舞われると、それまでに費やされた年月や労力が一瞬にして失われ、復旧には多額の費用がかかり、林業経営の継続も困難になることがあります。
また、自然災害や火災による森林の消失は、森林生態系や国土の保全といった森林の有する多面的機能にも多大な影響を及ぼすこととなるため、災害跡地を森林へ再生していくことが重要です。
森林保険は、森林保険法に基づき、火災、気象災(風害、水害、雪害、干害、凍害、潮害)及び噴火災により発生した森林の損害をてん補するもので、安定的、効率的かつ効果的に運営するため、契約事務や損害事務等を森林組合及び森林組合連合会に委託して実施しています。
森林所有者自らが8つの災害に備える唯一のセーフティネットとして、被災による経済的損失のてん補を通じて林業経営の安定に貢献するとともに、被災地の早期復旧により森林の多面的機能の発揮に大きな役割を果たしています。

図 損害てん補の対象となる8つの災害

 

契約申込及び保険金の受け取り手続き

契約申込み及び保険金の受け取り手続き

これらの役割を通じて、SDGsに定める「森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる。」等のターゲットの達成や持続可能な社会の実現に向け、森林保険の加入促進や森林保険契約地の損害補償を行っています。
取組の結果、2020(令和2)年度における森林保険の加入状況については、契約件数約8万5千件、契約面積約59万1千ヘクタール、損害のてん補実績については、1,194件(435ヘクタール)の災害に対する保険金支払額約3億円となりました。
これにより、被災地の森林の早期復旧や持続可能な森林経営の促進につながることが期待されます。

森林保険により損害をてん補した面積の推移
図 森林保険により損害をてん補した面積の推移

 

森林保険でてん補した災害の事例

図 災害事例 火災

【事例】火災(2018(平成30)年4月) 山梨県 公有林

樹種・損害時林齢:ヒノキ・8年生
実損面積/契約面積:1.08ヘクタール/7.26ヘクタール
支払保険金:2,063千円
(参考)
ヘクタール当たり保険料/年:5,888円
付保率:100%

図 災害事例 風害

【事例】風害(2019(令和元)年9月) 千葉県 私有林

樹種・損害時林齢:スギ・27年生
実損面積/契約面積:0.39ヘクタール/0.39ヘクタール
支払保険金:1,088千円
(参考)
ヘクタール当たり保険料/年:6,997円
付保率:100%

図 災害事例 水害  

【事例】水害(2018(平成30)年9月) 群馬県 私有林

樹種・損害時林齢:スギ・3年生
実損面積/契約面積:0.84ヘクタール/8.33ヘクタール
支払保険金:999千円
(参考)
ヘクタール当たり保険料/年:5,056円
付保率:100%

 

業務の実績

取組事例1 損害調査への固定資産税調査用航空写真の活用

森林保険センターでは、2017(平成29)年7月の九州北部豪雨により甚大な被害を受けた福岡県朝倉市において、UAV(ドローン)を活用した森林の損害調査を行いましたが、被害地が広域にわたるため損害調査に長期間を要することなどが課題でした。
そこで、朝倉市が撮影していた固定資産税の現況調査用の航空写真に着目し、研究開発部門と連携して罹災前後の写真等の比較による損害区域の判読手法について検討を行いました。さらに、損害区域の判読等の業務を民間航空測量会社に委託し、その成果に基づき、被保険者の皆様への保険金支払いを開始することができました。
今後とも、森林保険部門と研究開発部門の連携により、迅速かつ広域での損害調査の実施等の保険金の早期支払いに向けた検討を進めていく予定です。


・固定資産税調査用航空写真を活用した損害調査

図 固定資産税調査用航空写真を活用した損害調査

※罹災前・後の固定資産税調査用航空写真を比較することにより、損害区域面積を把握することができます。大規模災害発生時の有効な損害調査手法です。


取組事例2 森林経営管理制度における森林保険の加入促進活動

2019(平成31)年4月に導入された森林経営管理制度の運用に向けた取組が全国で進められています。森林保険センターでは、本制度における森林保険の活用に重点をおいた加入促進活動として、林野庁や都道府県等が開催する各種会議等にて自治体担当者等に森林保険制度の概要や森林経営管理制度における森林保険の重要性について説明を行い、森林保険の活用をお勧めしました。また、本制度に積極的に取り組んでいる都道府県、市町村、協議会・公社等への個別訪問による説明や働きかけも行いました。2020(令和2)年度は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により対面での説明が難しい場合には電話やメール等を駆使して各種情報の提供や丁寧な説明に努めてきました。
こうした取組の結果、これまでに経営管理権集積計画を作成・公告した113自治体のうち78自治体において、計画に森林保険加入に関する記載が盛り込まれ、さらにそのうち12自治体では森林保険に加入いただくといった成果に結びつきました(2020(令和2)年度末までの森林保険センター把握分)。

 

図 チラシ「森林経営管理制度における森林保険の活用」
チラシ「森林経営管理制度における森林保険の活用」

 

図 森林保険だよりNo.23

特集「森林経営管理制度を適切に運用するために、森林保険で自然災害リスクに備えよう!」

 

第5期中長期計画の概要

森林研究・整備機構は、独立行政法人通則法第35条の4第1項の規定に基づき農林水産省で定められた「令和3年4月1日から令和8年3月31日までの5年間」を期間とする「第5期中長期目標」に基づいて、「第5期中長期計画」を作成し、令和3年3月末に、農林水産大臣から認可を受けました。
令和3年4月から5年間は、国の政策や社会的要請に対応し、研究成果の社会実装を一層推進すべく、以下の重点課題を実施します。
重点課題(1)「環境変動下での森林の多面的機能の発揮に向けた研究開発」
重点課題(2)「森林資源の活用による循環型社会の実現と山村振興に資する研究開発」
重点課題(3)「多様な森林の造成・保全と持続的資源利用に貢献する林木育種」
また、水源林の造成により水源涵養(かんよう)機能を強化し、土砂流出・崩壊の防止、二酸化炭素の吸収による地球温暖化防止など、森林の有する公益的機能の持続的発揮に貢献します。
同時に、森林所有者の皆様が自然災害に備えるセーフティネット手段として、森林保険のサービスを提供します。


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