森林総合研究所について > 公開情報 > 交付金プロジェクトの評価 > 平成14年度交付金プロジェクト研究課題評価結果 > 渓畔林の環境保全機能の解析と評価手法の開発調査
更新日:2010年5月11日
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主査氏名(所属): 河合 英二(気象環境研究領域長)
担当部署 : 気象環境研究領域、森林植生研究領域、水土保全研究領域、東北支所
外部参画機関 : 埼玉県農林総合研究センター
研究期間 : 平成13~17年度
1.目的
これまで実施されてきた森林施業や治山事業は木材の生産や土砂害の防止を主要な目的として行われてきた。その結果、渓畔域における動植物の生育環境の保全や景観保全への配慮が不足し、渓畔林の保全を考慮した治山計画の策定手法は確立されていない。本課題では、渓畔域の保全を考慮した治山施設の整備ならびに渓畔林の造成と取り扱いに資するために、渓畔林の持つ多様な機能を明らかにするとともに、それらの機能を評価する手法を開発し、渓畔域の保全に配慮した治山事業の方向性を提示する。
2.当年度の研究成果の概要
渓流に治山・砂防堰堤が設置されると土砂や水の動き方が変わり、渓畔の樹木を枯死させたり、新たな更新の場を生み出すなど、渓畔林の動態に影響を与える。そこで、(1)土砂移動の視点からは、堰堤が土砂移動特性に与える影響とそのことが渓畔林に及ぼす影響、(2)植生の視点からは、渓畔林樹種が更新し生育するにはどのような場が必要か、そして、(3)両者をつなぐ視点として渓畔樹種の更新・生存に影響する土砂移動・微地形について明らかにしようとしている。
(1)に関しては、空中写真の判読結果から堰堤によって土砂堆積の発生頻度が増加したことを明らかにした。(2)に関しては、ハルニレの実生の発生および若齢個体の分布が、比較的新しい堆積面の林冠ギャップに対応していることを明らかにした。また、若齢個体の定着地は洪水による砂礫堆積地であると推定された。(3)に関しては、主要な渓畔樹種の種特性(種子の大きさ、光要求性、寿命の違い)と地形区分の関係を整理し、種特性及び地形型ごとの土砂移動の違いから、地形ですみ分けたり共存したりしていることを整理した。さらに、三者の成果と渓畔林の機能に関する課題を現場に適用するために、渓畔林復元・造成試験地を設定した。
3.当年度の発表業績
4.評価委員の氏名(所属)
大島康行(財団法人自然環境研究センター常勤理事)
北原 曜(信州大学農学部教授)
5.評価結果の概要
昨年度、各構成課題間の連携を明確にすること、またプロジェクト全体を出口へ向けて総合化するよう要望した。課題間の連携については、改善され一本に収れんして行くのが感じられた。総合化も大きく改善され、目標は達成された。現地での活発な討論は良い効果をもたらし、今年度の成果も著しく進展した。平成15年度の研究計画も妥当である。今後も、メンバー間の議論を深めるため、現地検討など現場を見て、メンバー間の議論を深めることを要望する。
6.評価において指摘された事項への対応
現地検討会など現地を見ながらの議論の機会を設けるとともに、課題間で共通する部分については、共同で現地調査し議論を行うなど、より一層の課題間の連携に努める。
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