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ハタケシメジ

所属:キシメジ科 シメジ属

学名:Lyophyllum decastes (Fries: Fries) Singer

生態:秋に畑、花壇、路肩などに発生する。腐生性のきのこで地中の腐植質、木材などを分解している。近縁のホンシメジは菌根性のきのこ。
ハタケシメジ、ホンシメジなどのシメジ属のきのこは、食用きのことしてよく知られているものが多い。ただし、際だった特徴がないため、
よく似た毒きのこと間違えることも少なくない。

ハタケシメジ写真1ハタケシメジ写真2

シメジの話

 ヒラタケが「しめじ」の名前で売られ、「ほんしめじ」の商品も実はブナシメジであり、まことに嘆かわしい。「香りマツタケ、味シメジ」という文句が、あまりにも有名なためか、「シメジ」の美名を詐称されたまま、母屋をとられた状態である。

 また地方に行くと、栽培きのことは別に、昔からさまざまなきのこが「シメジ」や「ホンシメジ」の名前で呼ばれていたようだ。そういう混乱を避けるためか、現在は、「シメジ」という標準和名のきのこはない。「ホンシメジ」という種はあり、菌根性きのこで、広葉樹やマツの林に発生する。

 日本人に人気のあるシメジは、室町時代から文献に登場するが、シメジとは、本来どの種をさすのだろうか。

 本朝食鑑には、「標茅茸」の名前で載っており、「標茅とは、茅の多く生える土地の名前で、このきのこが草茅卑湿の地に生えるので、こう名付けられている。形はマツタケに似ていて、やや小さい。傘を張ったものも張らないものもある。柄は短小で、円く肥っている。傘の上部は黄灰色あるいは柴黒色。傘の裏は細かいヒダがあり白い。肉質は柔弱でこわれ易い。味もまた淡美である。生、乾、塩蔵のいずれも佳い。京の山中に多く出る。とくに賀茂の神山、片岡、北山に生えるものが最も好い。その形状は、肥って美しく、味もよい。西国の諸山にも所によってはある。関東の山中にもままあり、下野(栃木県)に多く生える。江戸の町に送り、売っている。」と記されている。

 この文章から察すると、やはり古来の「シメジ」とは、ホンシメジをさしているようではある。柄が太っているのが、ポイントのようだ。ただし、江戸時代のいくつかの文献の記載を平均すると、「マツタケに似るが小型で、傘は灰白色から黒色、ヒダや柄は白い、肉質は柔らかい。」程度で、ハタケシメジなどのシメジ属、キシメジ属の多くの種も特徴が合致してしまう。もともとは、類似の食用になるきのこをひっくるめてシメジの名前で呼んでいたのかもしれない。あえて区別する必要のある時は、特徴を頭につけていたのだろう。

 本草綱目啓蒙には、類似のシメジとして、シラシメジ、ネズミシメジ、キシメジ、ムラサキシメジなどをあげている。本草図譜には、イッポンシメジ、センボンシメジ、カキシメジ、アオシメジ、ヤブシメジ、シモシメジ、ミヤマシメジ、アシタカシメジ、アカシメジなどの名が見られる。

 そして菌根性のホンシメジ(Lyophyllum shimeji)が、腐生性であるハタケシメジ(L. decastes)と区別されるようになったのは、意外に新しい。1970年頃まで、両種は混同されていた。生態的な特徴といくらかの形態の差異で識別可能ではあるが、よく似ている。またハタケシメジと呼んでいる種もさらにいくつかのグループに分けられる。

 ホンシメジは菌根菌ではあるが、腐生の能力もある。系統によっては瓶栽培も可能であることが、数年前に滋賀県森林センターによって明かにされた。現在、全国で品種の選抜と栽培法の改良が行われている。今度こそ、文字通りのホンシメジの栽培品が消費者の口に入るようになるのも近い将来だろう。

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