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更新日:2019年4月1日

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プロジェクト課題成果2:一貫施業システムの高度化

平成28年度成果

① 低密度(1500本/ha)でクラッシャ地拵区に植栽したカラマツ大苗は、通常バケット地拵区に比べて、下刈り区、無下刈り区ともに植栽2年目以降に成長差が認められ、植栽3年後は樹高で17±15cm(平均値±標準誤差)、地際直径で2.9±1.7mm大きくなりました。また無下刈り区の植栽苗は、隔年下刈区に比べると植栽3年後には樹高で19±15cm、地際直径で6.7±2.0mm小さくなりました。形状比については、地拵え法による明瞭な違いは認められませんでしたが、無下刈り区で14.6±4.7高くなりました(図.3)。
各処理区における3年後の生存率は65~95%とかなりばらつき、地拵えの方法や下刈の有無による明瞭な違いは認められませんでした。また、形状比が高い苗木で積雪による幹曲がりがより多くみられるといった関係も認められませんでした。

② 全国における植栽成績試験結果の解析からは、植栽直後はスギ・カラマツともに形状比は裸苗よりもコンテナ苗の方が高い傾向にあるものの、植栽1年後には両種とも裸苗と同等にまで低下し、その後は裸苗と同じ程度の値で推移しました(図.4)。

③ 長野県の現地試験からは、地拵えの労働生産性が、バケットで約400~1140m2/人時、グラップルで約250-1310m2/人時、人力で約100~160m2/人時となり(図.5)、同じ試験地・傾斜の場合、機械地拵えは人力と比較して3~12倍生産性が高いことがわかりました。地拵え後の土壌硬度は、人力と機械地拵えとの間で差は認められませんでした。一方、地拵え後の下草の植被率は、バケット、グラップル、人力の順に高くなる傾向がみられました。

④ 山形県のスギ・ワラビ混植試験からは、植栽したワラビの地上高は植栽年(小国は植栽翌年)の秋に46~58cm,金山及び鶴岡では植栽2年後の秋に113~130cmに達しました。一方、スギの樹高は、金山・鶴岡では植栽1年後の春、小国では植栽2年後の春までは、それぞれワラビと同程度かそれ以下でした。ワラビによる地表の被覆は進みつつありましたが、スギの苗木がワラビに被圧される状態にはいたりませんでした。小国の試験地では、植栽2年後の夏に下刈が行われたことにより、スギの樹高はワラビより高くなりましたが、鶴岡・金山の試験地ではスギとワラビの高さがほぼ拮抗し、植栽1年後の春から秋にはスギがワラビにほぼ被圧される状態となりました(図.6)。

平成29年度成果

秋田県においてスギのコンテナ苗を用いて、下刈り省略試験(連年区、隔年区、2-3, 5年区、無施区(一部で3年目以降に下刈り))を実施したところ、無下刈処理区で3~4年目以降に樹高成長の抑制がみられましたが、その他の処理では連年下刈りと同程度の樹高成長を示しました(図2-1)。しかし、無下刈り期間を長く取った場合、植栽後の誤伐率(1回でも誤伐を受けた本数割合)は、最大で24%となり、連年区(11%)の2.3倍になりました。また、多雪地域においては、下刈りを省略すると伸長したタケニグサやススキなどの下敷きとなり、主軸への雪害の発生がみられました。トータルのコストでは、一貫作業システムを導入し、下刈りを植栽後、2年目・3年目・5年目に実施する場合が最も低くなりました(図2-2)。


図2ー3
(※バー中の白斜線部分は、下刈に必要な経費。それ以外は除草剤散布の経費)
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岩手県においてはノースジャパン素材流通協同組合が中心となって下刈り作業に替わる競合植生抑制手段として除草剤の利用を導入し、植栽4年目までの累計必要労働量を計算したところ、類型必要労働量は「主伐前全面散布」で通常下刈りの51%、「下刈時筋状散布」で43%、「下刈後筋状散布」で61%となり、除草剤の利用により下刈作業の労働量が約40~55%削減されることが判りました(図2-3)。ただし、「下刈後筋状散布」では、機械刈払を実施する植栽当年夏、および2年目夏では「通常下刈」と同等か1.5倍の労働量となりました。また植栽4年目までの累計必要経費は、「主伐前全面散布」で通常下刈りの61%、「下刈時筋状散布」で80%、「下刈後筋状散布」で80%となりましたが、「筋状散布」では5年目夏で初めて通常下刈りを下回る結果となりました(図2-3)。

北海道においては、クラッシャを注)大(0.8m3)・小(0.5m3)二つのベースマシンに取付けて地拵え作業試験を行い、バケットによる地拵えとの効率比較を行うと共に、地拵え跡地で3ヶ月後の下草繁茂状態を調査しました。また、クラッシャ地拵地にカラマツ・コンテナ苗を植栽し、2年間無下刈とした場合の成長調査を行いました。その結果、クラッシャ地拵え作業効率は、小型機と比べて大型ベースマシンの方が15%向上するものの、20%の運用コスト高になることが判りました。 またいずれのベースマシンを用いた場合でも、バケット利用と比べて作業効率が短縮されました(図2-4)。林床の下草被度は、バケット区とクラッシャ破砕物除去区で最も高く、クラッシャ破砕物追加散布区(クラッシャ・2倍区)で最も低くなりました(図2-5)。クラッシャ地拵地に植栽したカラマツ・コンテナ苗は、2年間無下刈でも良好な成長を示し、下刈コストが最大62%削減できると試算されました。

注) クラッシャ(ロータリークラッシャ):造林の地拵え、育林の下刈り作業に威力を発揮する油圧シャベル搭載型下刈り・枝条粉砕機械。(イワフジのwebサイト <http://www.iwafuji.co.jp/products/forest_m.html> より引用


図2ー6

北海道造林協会は、市販の乗用型小型刈払い機およびその改良機と歩行型刈払い機による下刈り作業実証試験を実施しました。その結果、平坦地(0~10°)であれば約0.5ha/日で作業が可能であることが判りました。市販型では、林内に切り株(根株)が高密度で存在する場合には、機械による下刈り作業が不能となるものの、改良試作型では直径30cm前後の根株までは破砕可能となりました(図2-6)。

北海道内各地のカラマツ類の幼齢造林地において毎木調査を行い、事業用カラマツとカラマツ類の優良家系であるクリーンラーチ(グイマツ雑種F1)の樹高成長と生残状況等を調査・比較しました。その結果、ほぼ全ての試験地で、植栽から数年間のクリーンラーチの平均樹高はカラマツよりも大きな値で推移しました。またいずれの造林地においてもクリーンラーチの死亡率はカラマツよりも低く、概ね20%以下でした。

青森県においては、低密度で植栽されたスギ(68年生)と近傍に通常密度で植栽されたスギ(63年生)の幹形状および生育状況の調査を行い、同時に立木状態での強度推定試験を行いました。その結果、スギの低密度植栽の材質に関して、応力波伝播速度には両林分で大きな差は見られないが、ピロディン打込み深さは通常密度の林分の方が低い傾向にありました。

平成30年度成果

競合植生の繁茂を抑える地拵え方法も含めたさまざまな下刈り省略方法について、苗木の成長への影響およびコスト削減の観点から検討を行いました。

山形県においては、カバークロップとして収穫利益の見込めるワラビを採用し、(図2-1)のような施業スケジュールをとることで下刈り量を1/3 ~ 1/6に削減できるだけでなく、ワラビの収穫による収益のため、再造林の最終損益を黒字にできることが明らかになりました。

秋田県で提唱した一貫作業後の2・3・5年目の下刈り(通常下刈りの半分の回数)は、スギにおいては連年下刈りと比較して成長低下はみられず、コストの削減に繋がることが判りました(図2-2)。しかし岩手県のカラマツ植栽地で下刈り量を隔年に減らしたところ、連年下刈りと比較して明らかな成長低下がみられました。このため、隔年下刈りは耐陰性の低いカラマツには向いていないといえます。

岩手県において、競合植生の抑制のために下刈りに加えて除草剤の使用を組み合わせたところ、クマイザサが優占する場所で特に下刈り削減効果が大きく、除草剤散布2年後の時点で下刈りが不要となる場所もみられました。

長野県において植栽前にバケットによる地拵えを行った場合、植栽後の競合植生の繁茂が抑制されるため、通常5年間必要な下刈りを3年目のみにまで省略できる可能性が示されました(図2-3)。

北海道で実施したクラッシャを用いた地拵えでは、機械地拵えによる省力化だけでなく、破砕物のマルチング効果により植栽後の下刈りを大幅に削減できさらなる省力化に繋がる可能性が示されました(図2-4)。