建築用木材の部材化に関する研究 第3

木質パネルの透過損失

鈴木正治・斎藤寿義・田中俊成

 

要旨

 木質系の壁は,枠組壁工法や各種のプレハブ住宅に用いられている中空壁パネルの構造が多い。その種類が豊富であるので,データの空白が目立ち,とくに,軽量壁では遮音性が低いといわれている。研究目的は,木質材料とそれによる壁パネルの遮音特性の把握とデータを補かんし,遮音設計に役立てることである。実大パネルの透過損失(遮音量)を測定するため,内側が吸音,外側が遮音構造の音源室を試作した。音源からの白色雑音を試験体に投射させ,透過した音の周波数分析を行ない,スペクトルの特性を調べた。主な結果は,各種の木質材料の透過損失は,質量則による理論値よりやや大であり,厚さと密度が大きいほど大きい。一般に,厚さ515mmの場合,500Hzの透過損失は2025dBになり,とくに,ハードボード,パーティクルボードの遮音性がすぐれている。高音域の特定周波数で,ボードの屈曲振動がはげしく(コインシデンス効果),音の透過が大きい。中空壁パネルは表板と骨組からなる2重壁である。一般に,この平均透過損失は2735dBであるが,表板の種類や中空層の状態で変動する。2重壁の特長は,200Hzより1kHzにかけて,透過損失が著しく増大することであり,500Hz30dB以上に達し,間仕切りとして十分な性能を示す。ただし,低音で共鳴現象があるので,薄い表板はさけるべきである。一方,2重壁の透過の損失を音波の減衰効果を考慮して理論で表わした。遮音性向上のため,中空層に吸音材を充てんしたり,3重壁の測定を行なった。その他,モルタル壁は比較的良好な遮音性を示しており,間伐材利用のあぜくら壁は音が透過しやすい。また,壁からの人声の透過の程度を感覚尺度で判定し,透過損失と対応させた。会話のもれが小さいほど,透過損失が大きくなった。

全文情報(4,071KB)