カラマツの種内交雑における球果,種子の生産

勝田 柾・山本千秋・斎藤幹夫・福原楢勝・青柳茂男・金子富吉

要旨

 カラマツ落葉病抵抗性の遺伝様式を調べるために,精英樹と抵抗性クローン間および抵抗性クローン相互間の人工交配を行い,所要の家系群を育成した。この人工交配の過程で得られた結果率,球果あたりの種子数,充実率等の球果,種子の生産に直接関与する主要な形質について,測定結果をとりまとめて検討を加えた。
 結果率,球果あたりの種子数,充実率では,雌親間に明らかに有意差が認められる。充実率での雄親による差ははっきりしない。カラマツの種内交雑では,結果性や活力ある種子の生産性は,雌親の影響を強く受けると考えられる。
 雌親別の平均値を用いて,交配年度間の球果あたりの種子数および充実率の相関を求めると,両形質ともに有意な相関が認められる。これらの形質は交配年の気候の違いによる影響を受けるが,その良否は雌親の特性と考えられる。一方,交配年度間の結果率の相関は低く,そのため交雑可能度にも年度間に有意な相関が認められない。結果率は不測の環境因子の影響を受けて変動するので,稔性を調べるための一形質として扱うためには,初期落果についての再検討が必要であると考える。
 結果率,球果あたりの種子数,充実率は,雌親別の平均値で形質間に有意な相関が認められない。種内交雑での活力ある種子の生産性は,雌親の個別形質の数値だけで判断することはできない。
 低抗性クローンの自殖では,球果あたりの種子数は他殖とほとんどかわらないが,充実率が他殖に比べて著しく低下する。相対的自家稔性はO.07という低い値を示した。

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