スギの葉緑素異常(白緑葉)の遺伝

菊池秀夫

   要旨

 マキツケ床の芽生え直後における子葉の展開時から識別ができる 葉緑素異常苗のうちの一種類について遺伝様式を明らかにした。この葉緑素異常形質の特徴は,子葉, 初生葉および普通葉の基部に緑色部をわずかに残して白色を呈することである。この形質に「白緑葉」 と名付けた。
 この白緑葉形質をへテロ接合体でもった個体(Cr-43 静-6)の自家受粉家系で正常苗と白緑葉苗が 3:1で分離し,他殖家系では精英樹稲敷2号との交配家系で白緑葉苗が分離した1例を除いて白緑葉苗の 出現は認められなかった。静-6×静-65の交配家系1代目個体を用いた自家受粉家系では32個体のうち 17個体から,静-6を花粉親にした戻し交配家系では16交配組み合せのうち8交配組み合せから,および 兄妹交配の一部の交配組み合せから正常苗と白緑葉苗が3:1の割合で分離した。この交配結果から白緑 葉形質は劣性遺伝子に支配され,ホモ接合体のときに発現するものと考えられる。また,この白緑葉形 質は遺伝的標識形質としての利用が期待される。

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