ココナツの幹の解剖学的性質と二,三の材質指標との関係

とくにパルプ用材としての適性に関連して

須藤彰司

   要旨

 フィジー産の幼齢,成熟,老齢の3個体のココナツを用い幹の解剖学的 性質,とくに,繊維細胞および基本組織の細胞などの形態の変動を検討した。
 幹の内部ならびに年齢の異なる個体の間にみられる比重の変動と解剖学的性質との間には密接な関係 があることがわかった。しかし,繊維におけるスクレロシスは,水平方向には,幹の外側から中心へ,また, 軸方向には地際から先端へむかって進行するのであるが,これらの繊維を含む維管束の面積比率が,水 平方向には幹の外側から中心へむかって減少するのに対し,軸方向にはスクレロシスの進行とは逆に,地 際から先端へむかって増加するため,比重を繊維の品質を示すための直接的な指標とすることが難しいこ とがわかった。
 パルプの品質と関連が深いと考えられる繊維細胞の形態を示す指標として,細胞壁の2倍を細胞腔の直 径で割った値(ルンケル比)と細胞壁の2倍を細胞の直径で割った値(ミュールステッフの比)を選び,それら の幹の中での放射ならびに軸方向の変動,ならびに年齢の異なる3個体間の変動などに基づいて木材解 剖学的立場から,良質のパルプ原料として用いることのできる幹内での部位を示した。

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