抜根試験を通して推定した林木根系の崩壊防止機能

北村嘉一,難波宣士

   要旨

 林木の山崩防止機能は主として根系による土壌緊縛作用,いいかえれば 土層の剪断抵抗力の増大にあると考えられている。しかし林地土壌の剪断抵抗力の測定は簡単ではない。そ こで比較的測定の容易な抜根抵抗力が根系の土壌緊縛作用の指標になるものと仮定し,この抵抗力を立木と 伐採根株について,地際で斜面下方に引張る方法で,かつ地況条件のできる限り類似した林地において,ス ギ,クロマツ,カラマツ,ブナ,その他広葉樹について測定した。そして抵抗力と根元直経,林齢,伐採後 の経過年数,材積との関係を検討した。立木,伐採根株の抵抗力は根元直径,林齢とともに放物線的に大き くなること,しかし伐採根株では伐採後の経過年数とともに指数曲線的に急激に小さくなることがわかった。 樹種別にみた立木の抵抗力は林齢50年前後までは樹種による根の形態,あるいは材質的強度による影響は少 なく,生長量すなわち根元直径の大きさで決まることが明らかであった。また伐採根株は樹種により伐採後 の根株の腐朽状態に差異があって,抵抗力はクロマツが最も早く,ついで,一般広葉樹,スギ,ブナ(高齢 天然木),カラマツの順に早く低減することが推定された。また山地崩壊に対する低抗力としての林分の土 壌緊縛力を推定する場合は,根の大きさと強さに密接に関係する林分材積と低抗力の関係から推定すること が,実態に即した方法であることが明らかになった。

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