(研究資料)

廃材・木質厩肥中のCl量およびその溶脱性

桜井孝一

   要旨

 最近,鋸屑や樹皮等が燃料,畜舎敷料,土壌改良材として活用 されはじめている。しかし,その原木は輸入材の場合が多く,製材時までの過程で海水貯木されるた め,海水に由来するClが含まれるばかりでなく,これらを畜舎敷料に使用後の木質廐肥の場合では, 家畜の排泄物に由来するClが含まれている。一般に,これらに含まれるClの濃度が高いと,燃焼炉の 腐蝕や農作物の生長阻害の原因となるおそれがあるが,この種の材料に含まれているClの量を測定し た資料は少ない。
 今回,貯木状態の異なる数地区の製材工場から採取した輸入材や国産材の鋸屑および樹皮,牛舎に 敷いたスギおよびマツ・スギ混合鋸屑廐肥,市販のラワン鋸屑廐肥についてClの量を測定した。また, 上記の鋸屑と樹皮の一部および市販のラワン鋸屑廐肥を対象に,Clの溶脱性について室内および圃場 実験を行った。
 鋸屑や樹皮に含まれるClの量は原木の貯木状態に影響され,海水貯木期間が比較的長いと思われる 試料では1.81%の高い例がみられたのに対し,土場貯木を併用した試料では0.2%程度であった。ま た,木質廐肥におけるClの量は家畜の排泄物中のClの量にかなり影響される結果が得られた。
 なお,これらの試料に含まれるClは,水が十分存在すれば,比較的容易に溶脱されることが明らか となった。

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