ヒノキ林における樹冠遮断量測定とその微気象学的解析

服部重昭,近嵐弘栄,竹内信治

   要旨

 森林の降雨遮断現象を解明するため,ヒノキ人工林において 樹冠遮断量および林地の微気象測定を行った。その結果,年降雨量1,542.5oに対し,樹冠通過雨 量,樹幹流下量および樹冠遮断量はそれぞれ1,044.2o,169.4o,328.9oで,年降雨量に対する 割合はそれぞれ67.7%,11.0%,21.3%であった。降雨量と樹冠通過雨量,樹幹流下量および樹冠 遮断量の関係は,一次式で良く近似された。また,樹冠遮断量は降雨強度と降雨継続時間が大きい ほど増大する傾向が見られた。林分の直達雨量は降雨量の約20%と推定され,樹体を濡らすのに必 要な最小限の水量と定義された飽和付着水分量は1.24oであった。樹幹流下が発生する雨量は4.5o と推定された。
 樹冠遮断量と微気象因子との関係については,樹冠遮断量と気温,純放射量の相関が低いことが わかった。一方,風速,飽和水蒸気圧差は樹冠遮断量と正の相関が認められた。以上の微気象解析 に基づいて,PENMAN-MONTEITH式を用いて樹冠遮断量 の推定を行った。樹冠遮断量の予測精度は十分でなかったが,樹体付着水分の推定,表面抵抗と風 速の関係,樹冠の濡れ具合の扱い方などを明らかにすることにより,樹冠遮断現象の微気象学的な 解明は前進し,その予測精度も向上すると推察された。

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