(研究資料)

山腹における地表流下量と中間流下量の測定

菊谷昭雄,吉野昭一,河野良治

   要旨

 簡易な採水器を試作して,山腹土層のA屑とB層との境界,およびB屑とC層の 境界またはB層中に挿入して自然降雨による土層中の地表流下量および中間流下量を測定した。
 宝川試験地,初沢1号沢,2号沢における3年間(夏期間のみ)の測定で得られた結果によれば,流域中でも全く 流下量がない場所があり,また,同一場所でも時により流下量があったり,なかったりした。とくに地表流下量 にこの傾向が強かった。中間流下量については,流域の下流部の流下量が上流部に比較して多い結果も得られた。
 流域中,流下量の最も多い場所で得られた地表流下量の自記記録と,流域出口のハイドログラフとの対比をし た。自記記録から,流下が始まった時刻と,終った時刻をハイドログラフ上にとり,両時刻を直線で結んで,ハ イドログラフから両時刻間の流出量を分離した。このように分離した流出量を地表流出量とみなし,それと降水 量や流域土壌の乾湿状態を示す初期比流量との関係を求めた。その結果,降水量が多くなると,地表流出量が両 時刻間の全流出量に占める割合は80〜90%程度の値を示した。さらに,流域の乾湿状態が同じでも,流域によっ て,地表流出が発生するまでの降水量が異なり,地表流出の発生しやすい流域と発生しにくい流域のあることが わかった。これは流域が示す水文学的性質の一つと考えられた。

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