オゾン濃度減衰に及ぼす樹林の効果

荒本眞之,佐々木長儀,本木 茂,岡上正夫

   要旨

 特別研究「都市および都市周辺における樹林地の維持と管理に関する 研究」の一部として,1976〜'80年にわたり東京都下と筑波の各種樹林において,林内のオゾン濃度分布が 測定された。これに先だち,この問題に関する報告例がないので測定方法を決定するため無林地で各種測 定が行われた。その結果,オゾン濃度は風速の変動によって2〜6分程度の周期をもって変動することがわ かった。垂直変化には,濃度が急減する接地層があること,この層外の垂直変化はきわめて少ないこと, 層の厚さは無林地面積の増加に伴い薄くなるが約2mに収束することがわかった。これらのことから,林内 の相対濃度測定における林外対照点は林縁から10m以上離れた地上7.5mの高さにとることとし,測定時間 は3〜10分と決めた。11樹林の測定結果より,林内の濃度は林外より常に低く,次の特徴を有すことがわ かった。すなわち,垂直分布は,林冠中央部で濃度の極小値および枝下中央部で極大値が現れ,林冠上部 と林床部で濃度が急減する傾向となる。水平分布は,林縁より中心に向って濃度が漸減する傾向となる。 そして,物質密度が高い樹林あるいは部分で濃度低下が激しく起る。次に,樹林の濃度減衰効果を定量化 するため林内の濃度減衰率を求め物質密度の指標となる各種要因と対比させた結果,いずれの部分・方向 についても濃度減衰率は物質密度と反比例の関係があることがわかった。さらに,各種測定結果を総合す ると,林内濃度はオゾンの分解速度と風による補給の速度のバランスによって規定されることが推論され た。

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