(研究資料)

人工林の複層林施業に関する研究(V)

庇陰下における樹品種の生態的特性(1)

スギクローンの耐陰性

複層林施業研究班

   要旨

 複層林施業で下木植栽を行う場合,耐陰性の高い品種,系統を用いる ことが望ましい。このため,数多くのスギクローンについて耐陰性の検討を行った。九州,四国,関西の各支 場で,それぞれの地域において選抜されたスギ精英樹クローンの苗を用い,夏期の林内相対照度を約5% に維持したヒノキ壮齢林内に下木植栽を行い,ほぼ3生長期にわたって生長,枯損の状況を調査して,クロ ーンの耐陰性を判定した。九州では23クローンの挿木苗,四国では59クローン挿木苗と精英樹オープン種 子5系統の実生苗,関西では31クローン挿木苗を用い,さらに共通してヒズモスギ挿木苗を加えて検討した。 耐陰性は樹冠の枯損状況を5段階に区分した枯損指数と枯損率によって判定した。枯損指数2以下で健全 で耐陰性が高いと判定されたものは,四国では65クローン・系統の中10クローンであったが,九州,関西で は供試クローンのほとんどが耐陰性が高かった。また指数4以上で,50%以上の枯損率を示す耐陰性のと くに低いクローンが四国では21クローンあった。なお耐陰性が高いとされるヒズモスギの枯損指数は,九州 で1.6,四国で2.1,関西で1.3程度であった。また四国で用いた精英樹オーブン種子5系統の実生菌はいずれ も耐陰性が著しく高かった。

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