(研究資料)

人工林の複層林施業に関する研究(V)

庇陰下における掛品種の生態的特性(3)

人工庇陰下における生長

複層林施業研究班

   要旨

 庇陰下における林木の生長特性の解析には,ネツトなどによる人工庇陰装置が 広く用いられる。人工庇陰と林内の庇陰のちがいが生長に与える影響を,相対照度と樹高,直径生長の関係でみる と,生長の傾向はおなじでも,反応量に大きい差がみられた。庇陰による光質および温度,湿度などのちがいが反映 していると考えられ,人工庇陰試験結果を林内に適用する場合には十分配慮する必要がある。
 人工庇陰下(相対照度3〜10%)で育成したスギ,ヒノキポット苗を全光下に移した場合,重量生長率では暗い条件 で育成したものほど大きいが,葉の能率ではスギでは差がなく,ヒノキでは暗い条件で育成したものほど大きい傾向 を示し,反応も早かった。スギ,ヒノキの生存限界の明るさは3か年の人工庇陰試験結果では,相対照度でヒズモスギ 2.3〜1%,サンブスギ2.5〜2.0%,ヒノキ3.0%であり,ヒノキは7%で一部枯損がはじまるなど,スギ2品種より耐陰性が 若干低い傾向を示した。
 2生長期を4段階の人工庇陰下で育成したクロマツ,モミ,スギ,ヒノキの苗木について,樹高,直径,各部分重,葉面 積など14項目を測定し,全光区に対する弱光区の値の比率を尺度として,樹種の耐陰性を量的に表示した。またスギ の耐陰性のちがう7クローンについて,同化,呼吸量を測定しCO2収支を求めた。8月の5%相対 照度の下でのCO2収支は耐険性の高いクローンではプラス,低いクローンでは大きいマイナスの 値を示し,耐陰性試験の枯損率と対応する傾向がみられた。庇陰条件をちがえて育成したスギクローン苗木の養分含 有率をみると,K,Ca,Mgとも裸地の個体に比し,庇陰下の個体の含有率が高い傾向を示したが,耐陰性との関係は 明かでなかった。

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