東北地方におけるヒノキ人工林の生育状態と造林上の問題点

山谷孝一,加藤亮助,森麻須夫,後藤和秋

   要旨

 ヒノキ天然分布の北限は福島県いわき市付近の北緯37゜10'であり,東北地方は,大体,天然分布以北を 占めている。東北地方には明治末期から大正中期にかけて,大面積のヒノキ造林が実施されたが,それらは戦後 積極的に伐採され,林業経営と木材需給に大きい役割を果した。しかし,東北地方のヒノキ造林には否定的な意見 が支配的で,ヒノキ造林はほとんど実施されなかった。この調査研究は,東北地方のヒノキ入工林の実態を把握し, 造林上の問題点を明らかにして,ヒノキ造林を進める場合の基準を示すために実施された。6齢級以上の造林地の 資料調査から,成長の地域的差異や外分内容についての傾向を把握できた。これによって東北地方を,@ヒノキ造 林が期待される地域,A期待がうすい地域およびB両者の接点となる地域に区分し,12地区,28プロットの人工林 調査を行った。調査地での成長は地域,気候条件,土地条件に左右されるが,およそ木曽地方ヒノキ林に相当して いた。また,漏脂病被害状態は地域的条件に支配され,低温気候下で被害が激増し,成長状態とは反対に,斜面下 部・山脚の,湿性土壌で被害が大きかった。したがって,東北地方におけるヒノキ造林の適地条件は,太平洋型およ び類似の気候地域,海抜300〜400m以下の丘陵性地形の斜面で適潤性・弱乾性の匍行土であり,低温,とくに1月 最低気温-8℃以下および最深積雪1.0〜1.5m以上の地域を避ける必要がある。生産目標を用材林におき,密仕立て とし,ヒノキ純林あるいはアカマツ−ヒノキ二段林を目標としたい。

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