木材セルロース(溶解)の酵素加水分解に及ぼすガンマ線照射の影響

古屋信子

   要旨

 γ線照射処理を受けたセルロースのセルラーゼによる酵素分解性を明 らかにするため,γ線照射したセルロースのセルラーゼによる還元糖収率,および結晶化度,重合度,平衡 含水率,および内部表面積を測定し,これらの特性と酵素分解性との関係を検討した。
 セルロースの結晶化度,重合度は照射線量の増加によって低下するが,平衡含水率ならびに表面積は照射 線量の増加によって増大した。165Mrad照射したセルロースは,非照射ならびに10,60Mrad照射したセルロ ースと比べて短時間で急速に酵素分解が進むことがわかった。結晶化度の低下にともなって,還元糖収率は 増大するが,両者は直線関係にあることがわかった。還元糖収率は重合度の低下にともなって増大するが, 重合度が60から25に低下した場合,還元糖収率の増大の程度は,重合度が180から60まで低下した場合のそ れに比べて大であった。165Mrad照射したセルロースの酵素分解率は93%の値を示した。

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