(研究資料)

木造家屋における鉄釘の劣化調査 第3報

6年半経過した金属サイディング壁

今村浩人,大黒昭夫

   要旨

 茨城県にある在来工法による家屋を1軒調査した。この家の外壁は金 属サイディングであり,裏面に10mm厚のインシュレーションボードが接着されている。壁内にはグ ラスウール等の断熱材はなく,中空である。また,床より下の部分の内壁に,壁内に通じるすき間 のある工法がとられているため,少なくとも壁内の下部では換気が行われる。木ずりを土台と平行 に接合している釘(N50F)の劣化度は,目視による5段階の評価によると,北側の壁で便所と浴室の 部分では,平均4.7,東側の壁では全体の平均が2.3,台所の流しに接する部分で3程度である。西側 の妻壁では平均4.2である。ここは,窓やひさしがなく,また軒の出が少ないため直接雨のかかりや すい環境である。さらに犬ばしりがないため雨のはね返りがサイディグの下端にある木ずりおよび 土台に当たりやすいと推定された。間柱と土台に斜打ちされた釘は浴室付近で一部4.0〜4.5,西側 の壁では3.2,東側の壁では台所の流しに接する部分で3.9,その他で2.2である。木ずりと問柱およ び柱における釘はすべて3以下であり,垂直方向での明確な傾向もみられない。木ずりの含水率と釘 の劣化度の間に直線関係がみられる。また,せん断耐力上の有効直径は,劣化度1と2では差はなく, 2より上で大きく低下する。なお,釘で接合された木材に腐朽はみられなかった。

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