スギ生立木の変色・腐朽,特に材の電気抵抗値と検出された菌類

鈴木和夫,吉田成章,堂園安生,橋本平一,小林享夫

   要旨

 優良材生産の障害とされるスギ生立木の材の変色・腐朽の九州地方 における概要を明らかにし,これらの材の地方による呼称についても調査した。また,これらの材質劣化 の初期の原因について検討を加えた。原因としては,穿孔性害虫による加害以外に,暗色枝枯病,凍害, 立地環境に起因するものなどに区分され,これらの被害材の木口面での変色の形状は多様であった。
 このような生立木の材の変色・腐朽の調査法として電気抵抗値による判定について検討した。その結果, 本報における測定方法において電気抵抗値180〜200kΩより低い場合には,その材は肉眼的に識別され る異常変色を呈していた。
 生立木材中の菌類についてみると,健全生立木中でも,種類数は限られるが菌類は存在し,地際部に近 づくにしたがって菌類の検出頻度は高まった。一方,変色・腐朽木では肉眼的に健全と思われる材部でも 健全生立木に比べて菌類の検出頻度は高まり,変色・腐朽部では菌類の種類数も著しく多かった。
 このような生立木中の菌類の種類あるいは種類数と電気抵抗値との関連性について検討した結果,両者 には相関が認められなかった。電気抵抗値は材中に存在する菌類の質的・量的な変化と対応するものと推 測される。

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