(研究資料)

屋外壁の簡易防火補強法の評価試験

上杉三郎・福井康夫

   要旨

 既存の木造住宅の外壁に関して,防火性向上のための補強を行うには,次のことを考慮しなければならない。第一に,簡易な補強で工期が短いこと,第二に防火性能のみならず屋外耐候性能も十分に有するもの,第三に経済的負担をできるだけ軽減することである。これらの諸条件を満すと考えられる市販品の中で,湿式工法としてモルタル壁を9体,乾式工法としてボードの直張り壁を9体,併用としてボード直張りの上に耐火性材料の吹付けを行った壁を9体作成した。材料としては6種類である。これらの試験体(2,600×1,920mm)は,JlS A 1301にもとづく防火2級の標準温度曲線にしたがって,加熱試験を行った。
 その結果,石綿スレート等の無機質ボード直張り壁では,防火性能が低く,10分程度で裏面へ炎の貫通か生じる。バーミキュライト系発泡性材料の吹付けをした無機質ポード壁は,防火性能は大きく向上したが,7か月間の屋外暴露試験の結果では,屋外耐侯性に乏しく,実用上問題がある。ラス下地のないポリマー付合板モルタル壁は,仕様書(24mm)以上の塗厚と工法の順守をしなけれぱ,加熱中にモルタルの脱落が生じ,裏面への炎の貫通が早くなる等,その防火性能は低下する。力骨番線入りのラスモルタル壁は,この加熱試験の範囲で,十分な性能を示した。

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