2次元切削による単板形成過程の解析

木下敍幸

   要旨

 品質を大きく左右するが,本報告ではこれの発生機構を基礎的に解明した。平 削り方式による単板切削時の被削材の状態の観察から,切込み深さ,刃口間隔等の条件で裏割れの形態 は大きく左右されることが明らかになった。裏割れの形成は,特に切削時に刃先前方に生じている切削応力 の分布状態に支配されると考え,有限要素法および光弾性被膜法により切削応力の解析を行った。まず,ノ ーズバーを作用させずに単板切削を行う場合,切削の進行にともない実際の切り込み深さ(瞬間切込み深さ) および切削力は変化し,裏割れが生じた後切削距離がある時点に達した時に次の裏割れが形成される。切 削の進行にともなう被削材内における切削応力の分布状態を,均質2次元異方性体として有限要素法により 解析した結果,刃先に近いすくい面には切削方向に平行および直交方向に引っ張り応力があらわれ,これら の応力は切削の進行につれて大きくなり,被削材の引っ張り強さにほぼ達した時裏割れが形成されることが 明らかになった。また,刃先に近い刃物のすくい面上でまず裏割れが形成され,その割れの発達方向は設定 切り込み深さに左右されることが推定できた。つぎに,刃口条件による切削応力の分布を光弾性被膜算法に より解析した結果,刃口間隔を狭く設定して切削すると,刃先前方には切削方向に平行および直交方向のい ずれの方向にも圧縮応力があらわれ,またせん断応力も小さく,裏割れが形成されにくい状態になっている ことが判明した。

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