樹脂処理木材の耐熱性 第1報

フェノール系樹脂処理木材の熱分解

大黒昭夫

   要旨

 フェノール樹脂で処理された硬化積層材や注入木材は,素材に比べて 機械的性質,寸法安定性,電気的特性,耐候性などで優れている。また,木材工業で用いられている合成 樹脂中で,木材の熱分解温度領域で熱的に安定な樹脂は,フェノール系の樹脂であり,特にフェノール樹 脂は優れた耐熱性を示す。しかし,マトリックスが木材となっている場合のこれらの複合材料の耐熱性の限 界を示すデータは少なく,特に熱分解に関する資料は乏しい。
 本報では,フェノール樹脂の本材との親和性の面から低分子量樹脂(LR)を,工業的な樹脂としての面か ら高分子量樹脂(HR)をそれぞれ用いて樹脂処理木材を作り,これらの熱的性質を主に熱重量測定(TG) で検討した。また,同じフェノール系樹脂であるレゾルシノール樹脂(R)処理木材についてもあわせて検討 した。
 樹脂自体では,レゾルシノール樹脂の熱安定性はフェノール樹脂より悪かった。樹脂処理木材の重量減 少は,いずれも素材より低温で始まり,その割合も大きかった。さらに,セルロースの分解温度領域のTG 曲線の動力学的解析から,樹脂処理木材の熱分解の活性化エネルギー(E)は,素材の62Kcal/molの約 1/2となった。これらの事から,樹脂処理はセルロースの熱分解を促進するような影響を与えると推定され る。しかし,レゾルシノール樹脂はこの影響が小さく,またフェノール樹脂の分子量の影響は認められなか った。

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