散水−乾燥処理が町およびその周辺の木材の劣化に及ぼす影響

今村浩人

   要旨

 木材の釘接合部は,使用される場所の環境によって劣化の進む程度が 異なる。特に,湿潤−乾燥の1サイクル期問の長さは,町および釘周辺の木材の劣化に複雑な影響を及ぼ すものと考えられるが,詳細な研究はなされていない。本研究では,1サイクルの長さが異なる散水−乾燥 のくり返し処理が,どのように釘接合部を劣化させるかについて検討を行った。散水(室温)および乾燥(60 ℃)の期間を等しくし,1サイクルの期間を10日,30日および60日とし,全処理期間を120日とした。釘接合部 の劣化を総合的に評価するため,2本の短冊状のベイツガ材を端部で重ね合わせ,CN50釘1本で接合した 試験体を作成し,これに釘を中心に回転してV字に変形するような荷重を与え,最初に現れるピークでの荷 重をPとした。
 処理後,試験体の含水率を15%に調湿して得たPは,1サイクル期間が10日および30日よりも60日の場合 が低下は大きい。Pは,接合部に生じた割れによって低下し,割れの長さは2本の木材の木口面からみた年 輪方向の組合わせの影響を受け,木表と木裏が接する場合で最大である。釘のさび量は,散水−乾燥の1 サイクル期間の短いほど大である。釘のさび量は,ベイツガでは比重(0.55〜0.61)が低い場合の方が大き かった。釘のさび量と,釘を引き抜いたあとの木材の針穴の直径とは直線関係にある。Pは,木材の比重, 釘のさび量および木材の割れの長さを説明変数とした重回帰式で表すことができ,釘および周辺の木材の 劣化程度を表す一つの尺度と考えられる。
 なお,異なる樹種を用いてさび量を求めた結果,エゾマツの場合がナラ,センおよびキリよりさび量が多く, 樹種による特性も考えられる。

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