オオウズラタケによる褐色朽の化学的特性

石原光朗,志水一允

   要旨

 褐色腐朽菌の産生する多糖類加水分解酵素に関する基礎的知見を 得ることを目的として,カラマツ(Larix leptolepis)およびシラカンバ(Betula platyp hylla)の褐色腐朽菌オオウズラタケ(Tyromyces palustris)で腐朽させ,腐朽に伴う木 材成分の化学的変化を研究した。すなわち,腐朽材のリグニン含量と糖組成の分析から腐朽過程にお ける褐色腐朽菌の基質選択性を検討し,さらに腐朽材からホロセルロースを調製し,ゲル・パーミエ イション・クロマトグラフィーおよびX線回折により,セルロースの重合度および結晶化度の低下を調 べた。
 その結果,オオウズラタケによりヘミセルロース,特にマンナンが優先的に分解され,腐朽の初期 段階(重量減:15〜20%まで)でセルロースの分解は限られていたが,その重合度は急激に低下した。 腐朽の進行とともにセルロースの分解率は増大し,重量減が20%を越す段階から結晶化度も次第に低 下した。また,リグニンは酸可溶性リグニン量が若干増加する程度で,腐朽が進んだ段階でも,その 絶対量はほとんど変化しないことが認められた。

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