ハードボード原料としてのスギチップのアスプルンド・デファイブレータによるパルプ化

鈴木岩雄

   要旨

 アスプルンド・デファイブレータによって解繊しハードボード原料 とするスギチップの利用が近年増大したことから,デファイブレータパルプにおけるシブ(shive)の形 成,とくに浮上性シブの形成や泥状物質の形成が大きな問題となっていた。これらの障害についての情報 を取得し,それらの解決方法を見いだすために,二三の実験を行った。
 解繊パルプ中の浮上性シブは,原質にしたとき,その表面に浮上し,そのまま湿板に抄造されてしまう ため,ボード表面の外観の低下を招来するので,その解決策が求められていた。まず,実験室的手法によ って,浮上性シブの形成の再現を試み,その再現に成功した。ついで,浮上性シブをろ紙による付着捕集 法で数量化して,浮上性シブ含有率を測定した。浮上性シブの形成に関する規則性を検討して,解繊パル プの含水率との間に有意な関係があることを明らかにした。その含水率は,原料チップの含水率と蒸煮解 繊条件によって変化するので,浮上性シブを形成しない良質パルプを取得するには,原料チップの含水率 を調整し,低温長時間蒸煮が有効であることがわかった。また,樹皮付きチップの解繊では,浮上性シブ を形成しない条件でパルプ化すると,浮遊物の沈殿が困難な排水が排出するので,その沈殿処理について 検討し,硫酸アルミニウム−石灰処理法の有効性を明らかにした。乾・湿チップの混合蒸煮解繊実験,な らびに類別した原料5種類についての蒸煮解繊実験を行い,浮上性シブの形成の規則性を検討した。これら の類別した原料から浮上性シブを生じない条件でパルプ化しハードボードを製版し,その性能を評価した 結果,これらの原料はいずれもボード原料として利用可能であることがわかった。シブ(浮上性および沈 降性)およびそのパルプについて,走査電子顕微鏡の観察を行い,浮上性シブの形成に関する知見の補完 を行った。

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