木造試験住宅の温熱的性能 第1報

冬季における和室内の温度分布

葉石猛夫,末吉修三,斎藤寿義

   要旨

 木造住宅の居住性は総合的には高く評価されているが,その構 法が日本の気候風土にもとづく夏季指向型であったため,住宅の今日的水準からは冬季の温熱的性 能に関して不十分な点がみられる。
 この研究では,冬季における木造住宅の居住性向上の指針を得るため,林試構内のテストハウス の和室を用いた実際の暖房状沈下で,暖房方式の相違による室内温度分布の差異,空気撹拌による 温度分布の改善効果,天井断熱材の有無による温度上昇効果などを検討した。
 暖房方式に関しては,放射型,対流型などいずれの方式によっても室内の垂直方向の大きな温度 差は解消されなかったが,空気を撹拌することによってその温度差が縮まり,とくに畳上70cm以下 の空気温度が上昇し,床座生活主体の和室にとって居住性改善の効果がみられた。また,天井断熱 の効果も顕著で,垂直方向の温度差が減少し,どの暖房方式でも室温が2〜3℃上昇する結果が得ら れた。一方,暖房停止後は室温が比較的遠く低下した。非暖房時,とくに冬季,早朝の室温の著し い低下を防ぐための材料,構法的対策が望まれる。

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