暖帯広葉樹の成長と外分構造 第3報

固定標準地による樹種および樹種群の成長特性

粟屋仁志,西川国英,本田健二郎,小幡 進

   要旨

 暖帯広葉樹林の施業指針を得るため,長崎県下のシイ・カシを主 とする天然生林に試験地を設定し,択伐・皆伐・無施業の施業方法の相違による暖帯広葉樹の成長と 外分構造の変化を調査してきた。すでに1939年より1971年までの32年間の調査結果をまとめ報告を行 った。この調査は16年間隔での調査であり,樹種ごとの成長過程を詳細に追跡するためには不十分で あったので,別に試験区内に固定標準地を設定し,1959年より12年間,4年間隔で調査を行った。今回 の報告はこれをとりまとめたものである。
 施業方法別の材積成長量は調査期間を通じて,択伐区では増大,皆伐区では減少,無施業の保存区 では一定という傾向を示し,期間内の成長量はそれぞれ,128,82,143m3と なったが,最後の4年間では択伐区の成長は保存区を上廻った。
 樹種ごとの成長過程は,調査期間中の本数増減と材積成長から解析され,代表的樹種については更 新の特性や耐陰性など成長特性が明らかにされた。
 シイ・カシを主とする広葉樹林で,カシを保存する択伐によって,カシ類優位の外分に誘導できる が,今回の詳細な両樹種の成長過程の分析によれば,シイ類の成長はカシ類を大きく上回るので,択 伐によって一旦カシ類優位となった外分も,放置すれば再びシイ類優位となることか明らかとなった。 カシ類優位を安定させるには択伐の繰っ返しが必要である。

全文情報(1,543KB)