治山ダムクラックの発生・挙動特性 第1報

治山ダムクラックの分類と挙動に関する実用試験

陶山正憲

   要旨

 公共性の高い治山ダムの安全設計と事故診断技術の向上をはかる ため,治山ダムクラックの実態調査,クラックの分類,およびクラックと伸縮継目の開口量の測定を 行った。
 まず,治山ダムクラックの実態調査は熊本,高知,大阪,青森の4営林局管内および愛知県下で実施 した。その結果,治山ダムに発生したクラックは,ダムの材質とともにクラックの発生位置,規模, 発生方向,形態などに特徴が認められたので,これら四つの発生要因ごとにクラックを分類した。
 次に,治山ダムに発生したクラックおよび伸縮継目の挙動に関する調査を桜島,眉山,祖谷川平谷の 3地区で行った。その結果,桜島地区では,クラック開口変位量と伸縮継目の開口量は,いずれもほぼ 同様の経年変化のパターンを示した。一方,眉山地区では,伸縮継目はすべて冬期に開口し夏期に閉塞 するが,クラックの開口部は通年的にほとんど変化を示さなかった。これに対して,祖谷川平谷地区で は,クラック開口変位量はほとんど一定であるが,伸縮継目は地すべり側圧の影響で夏期に開口する現 象が認められた。
 また,クラックや伸縮継目の開口部の日変化と堤体温度の日周変化との関係を知るため,活火山桜島 地区で盛夏日と厳冬日に連続測定を行った。その結果,クラック開口変位量と伸縮継目の開口量は,い ずれも堤体温度の日周変化の影響を受けて顕著な日変化を示し,さらに,クラック開口変位量の日変化 には,ヒステリシス現象が確認された。

全文情報(880KB)