森林生態系における炭素の循環

リターフォール量とその分解速度を中心として

河原輝彦

   要旨

 リターフォール量および分解量を中心に有機物の動きを調べ,森 林生態系の炭素の循環の概要を検討した。
 森林の土壌中に合まれる炭素量は,林分によって大きく異なるが,広域的にみると,気温の低い亜寒 帯林にくらべて気温の高い熱帯林のほうが少ない傾向にあるといえる。
 土壌有機物の主な供給源であるリターフォール量は,一般には熱帯林で最も多く気温が低くなるにつ れて低下するといわれている。しかし筆者の調査例では針葉樹林の場合は明らかでなく,広葉樹林の場 合のみ気温の高い地域にある森林ほど多く,気温との間におよそ一次の直線関係がみられた。
 落葉の分解速度は,針薬よりも広葉のほうが速く,また気温の低いところよりも気温の高いところほ ど速く,分解速度と気温との間には指数関数的な関係があった。針葉に広葉を混合すると野外でのリタ ーバッグによる実験では,針葉の分解が促進される傾向がみられたが,室内でのインキュベーションに よる実験でははっきりしなかった。2種の針葉を混合した場合は,野外のリターバッグによる実験でも その効果ははっきりしなかった。
 皆伐に伴う土壌への有機物供給量の変化,あるいはヒノキ純林と混交林におけるA0層の状態から,林 地保全上問題のあるところでは炭素の循環系の乱れをなるべく少なくするような施業法を取り入れてい く必要があると考察した。

全文情報(1,358KB)