アカマツの繊維傾斜度

中川伸策

    要旨

 アカマツを構造材として利用する場合に,品質に大きな影響を及ぼす因子の一つとして, 繊維傾斜度の大小が挙げられる。これは,繊維傾斜度が,用材の乾燥後のねじれ量と高い相関関係をもつためで,利用上の欠点 となっている。63個体から採取した円板について測定した繊維傾斜度は,樹心から外側へ向かって変化している。この繊維の傾 斜は,ほとんどの個体で,S傾斜から始まり,その角度は外側へ向かって増加し,最大値が現れるようになり,最大値はほぼ樹 心から10年輪目までに出現している。円板に現れる最大繊維傾斜度と総平均値(絶対値)との間には,1%水準で,有意相関が あるので,前者を個体の代表値とみなすことができる。
 各個体から採取した円板について,繊維傾斜度の樹心から外側へ向かう変化の仕方をみると,S傾斜の範囲内で変化する個体 が全体の60%を占める。次いで,最初はS傾斜を示すが,後にZ傾斜に移行するもの,および,その後さらにS傾斜へ繰り返し変化 する個体が約35%出現する。残りの約5%の個体は,極めて小さい繊維傾斜度を示し,樹心から数年輪後に5%以下の最大繊維傾斜 が現れている。
 したがって,構造用材としての適性条件をもつアカマツは,各個体のかなり若い時期においても,5%以下の最大繊維傾斜度を 目安にして選ぶことができる。

全文情報(592KB)