木材乾燥におけるクリープとセットに関する研究

久田卓興

   要旨

 木材は水分および温度が時間とともに変化するいわゆる非平 衡状態で,粘弾性的性質が平衡状態に比べ特異なことが知られている。本研究は木材乾燥の立場か ら水分非平衡下の木材の粘弾性的挙動を明らかにし,乾燥操作の適正化に役立たせようとするもの である。本報では主として木材の接線方向のクリープを対象にして,諸因子の影響を検討するとと もに,乾燥割れや各種損傷の発生に関連してドライングセットについて総括的に論じた。主要な成 果は次のとおりである。
 1)乾燥過程のクリープに影響を及ぼす因子として,応力,含水率,温度などをとりあげ,その挙動 を明らかにした。応カ,含水率については線型的な取り扱いが可能な限界が明らかになり,温度に ついては相対クリープが温度上昇により減少することや,樹種により大きな差違のあることが明ら かになった。なお,乾燥速度は乾燥過程のクリープに対して影響が小さいと思われた。
 2)樹種別にドライングセットを比較した結果,セット量と自由収縮率との比が,乾燥における初期 割れの指標として利用できる可能性が見出された。
 3)ドライングセットの生成過程やセット材の性質,収縮阻止により生じる応力,2軸負荷によるク リープなど各種の性質を調べこれに基づいて乾燥過程の木材の粘弾性的変形機構について推論を試 みた。

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