ブナ林における天然更新施業の検討

奥只見地域の事例調査から

鈴木和次郎

   要旨

 福島県奥只見地域に位置する山口営林署管内の施業履歴の異なる天然更新施業地5林分 において,更新実態調査を行い,天然更新施業のあり方を検討した。
 母樹保残伐採のあと林床処埋を行い,天然下種により更新をはかった皆伐・天然下種第1類の施業地では,林床の刈払いが 行われた場所に,上木伐採前後の豊作年に由来するブナの更新稚樹が多数存在した。上木伐採後,ブナの前生稚樹および小 径木による更新をはかった皆伐・天然下種第2類の施業地では,林床にササ類や低木類が優占し,目的の更新稚樹は,わずか しか認められなかった。しかし,後者の施業地でも,トラクター集材により林床植生が破壊され,結果として第1類と同じ更 新法となった場所には,多数の更新稚樹が存在した。以上の結果から,この地域において,皆伐・天然下種第2類による更新 はむずかしく,林床処理を伴う第1類が天然更新施業法として適当であると考えられた。また,天然更新施業林分におげる更 新稚樹の分布には,バラツキが大きく,林分全体の更新実態を把握することがむずかしく,更新の成否判定法の確立の必要 性が強く示唆された。

全文情報(1,433KB)