放射加熱による合板の炭化

上杉三郎

   要旨

 火災時の火源から面材料への熱伝達は,放射(ふく射),伝導,対流によるが,実火災で の熱的影響は放射に最も大きく依存する。この実験では電気ヒーターによる放射加熱によって,木質系の,特に内装材料とし て代表的材料であるラワン合板が,各種の加熱温度によって与えられた熱工ネルギーに対して,どの程度の熱損傷を受けるか を,炭化深さの比較によって基礎的に検討した。
 その結果,空気の供給と流れが制限された加熱条件の下では,@合板の炭化深さはヒーターの設定温度が同じならば,ある 深さまでは合板の厚さに無関係に試験体(合板)に流入する熱エネルギー量に比例する。A炭化速度は流入する熱エネルギー の総量よりも単位時間当たりに供給される熱エネルギー量に比例する。Bヒーターの設定温度が低いと炭化速度は遅く,炭化 開始までの時間は長くなり,設定温度が高いと炭化速度は速く,炭化開始までの時間は短かくなる。C黄褐色に変色した部分 と炭化部分を分離して熱重量変化を測定した結果では,変色した部分は熱分解がまだ不完全であることから,炭化深さは変色 部分を含めない方が適切であることが明らかとなった。
 これらの結果は,火災時におげる木質材料の防火安全性能としての有効厚さを決定する基礎資料となる。

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   −林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
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