木材中に添加した窒素濃度が白色腐朽薗によるリグニン分解に及ぼす影響 第1報

菌種による相違について

山本幸一,松岡昭四郎,広居忠量

   要旨

 木質系資源から生物的処理によりリグニンを効率的に除去し,その残渣の有効利用を図る ことは重要である。徴生物による木材中のリグニン分解を促進させる試みの一つとして,木材自体に窒素源を添加し,白色腐 朽菌による分解を行い,添加窒素濃度が本材中のリグニンの選択的分解に及ぼす影響を調べた。
 無機態窒素としてリン酸2アンモニウム,アミノ態窒素としてアスパラギンを用いたが,前者の添加はリグニンの選択的分解 を阻害する傾向にあった。そのため窒素源には主としてアスパラギンを用い,濃度の異なる水溶液(0.0〜1.6%)を減圧注入し たシラカンバ試験片(20×20×10mm)を窒素無添加の培地上で7種類の白色腐朽菌により分解させた。
 その結果,木材の分解は一定のアスパラギン添加濃度までは促進された。すなわち,ヒラタケ,タモギタケ,Sporotrichum pulverulentumは1.6%濃度の添加で,Phanerochaete chrysosporium,マンネンタケは0.8%で分解は最も促進された。 一方,ナメコ,シイタケは低濃度の添加では分解は促進されたものの,高濃度では阻害された。
 リグニンの選択的分解はアスパラギンの添加により向上するもの,低下するもの,あまり左右されないものの3つの型に分け られた。リグニンの選択的分解の程度をアスパラギン無添加と1.6%までの水溶液添加とで比べると,ヒラタケ,タモギタケで はリグニンの選択的分解は増加傾向を示した。
逆にSporotrichum pulverulentum,Phanerochaete chrysosporim,シイタケ,ナメコでは減少傾向を示した。マンネン タケでは添加濃度にあまり左右されなかった。

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   −林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
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