蛇紋岩由来の暗赤色土の性質,生成ならびに分類に関する研究 第1報

東三河地域の蛇紋岩由来の暗赤色土と周囲の赤色土との性状の違い

森田佳行,大角泰夫,夏目太猪介

   要旨

 これまで,暗赤色土に関する,研究はほとんど行われていないため,その性質や生成につ いては不明な点が多く,また分類上の位置づけも明確でない。筆者等は暗赤色土のもつ各種特性を解明するために多方面から の調査を行っているが,本報では,東三河地域で見られた蛇紋岩由来の暗赤色土と,その周辺に広く分布する赤色土について, それぞれの断面形態,一般化学的性質,無機化学組成等を比較検討した。なお,ここの暗赤色土の母岩である蛇紋岩そのもの についても化学組成を調ベ,検討の際の基礎資料とした。その結果以下のことが明らかになった。@調査地は海抜高100〜200 mの小起伏山地で,蛇紋岩地の多くには晴赤色土が分布していた。暗赤色土地域の植物は,かなり強度な生育阻害を受けている ことが認められた。A晴赤色土はpHが高く,塩基に富みかつ塩基置換容量も大きく,周辺の赤色土に比べて明らかに異なる性 質を示した。B蛇紋岩山地の斜面下部ではマグネシウムを主とする塩基系暗赤色土が分布しており,斜面の部位によって亜群 を異にしていた。C調査地の蛇紋岩はSiO2,Al2O3の含有量が少ない。一方,MgOは著し く多かった。Fe2O3や各種重金属も多量に含まれていた。同様な特徴が蛇紋岩に由来する暗赤色土に 多く認められた。D暗赤色土の化学組成は母岩である蛇紋岩に比べ,MgOが著しく減少する一方,相対的にFe2O3, Al2O3が増加していた。重金属類は土壌生成の過程で濃縮されるようであった。E暗赤色土の土壌化に 伴う化学組成の変化と細土のpHとの間に,Mgo,MnO等では高い相関関係が認められた。

   −林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
     森林総合研究所ホームページへ