(研究資料)

ヒノキ単純林における落葉および土砂の移動

井上輝一郎,岩川雄幸,吉田桂子

   要旨

 ヒノキ一斉単純林の地表面におけるヒノキ落葉や土砂の年間移 動量および,これらと降水因子や下層植生との関係,ならびに,ヒノキ落葉の地表面での形態的,質 的変化などについて検討した。ヒノキ落葉および土砂の年間移動量を下層植生の繁茂する植生地と, 下層植生を除去した無植生地とで比較すると,無植生地では植生地にくらべてヒノキ落葉は1.9〜2.8 倍,土砂は2.8〜3.6倍の移動量が測定された。ヒノキ落葉の年間移動量は植生地では年間供給量(年 間落葉量)の19〜31%であるのに対し無植生地では70〜91%で,下層植生を欠く林地では年間落葉量 の大半が移動したことになる。ヒノキ落葉と土砂の移動は,降水量と60分間最大降水量の積(降水指 数と仮称)との間にきわめて高い木目関関係のあることが認められた。移動したヒノキ落葉は,秋の 落葉期から翌年の夏にかけて2o以下の鱗片葉の占める割合が増大し,また,C/Nの低下することが認 められ,ヒノキ落葉は落下後比較的速やかに細片化され,同時に分解も進行することがうかがわれた。 土砂の移動に及ぼす植被の影響について検討した結果,無植生地では植生地より雨滴の飛散作用に起 因する飛散土砂の量が多かった。このことから,下層植生の存在は,飛散土砂の防止に大きい役割を 果しているものと判断された。

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   −林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
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