森林土壌の土壌水分に関する研究(第5報)

京都府中部および南部山地土壌の水湿状態,保水量,水湿指数

吉岡二郎

   要旨

 テンションメーターを使用して京都府下の6観測地点,5上壌型の森林土壌について 18〜24カ月間連続的に水分測定を行った。
 土壌の水湿状態は基本的には気象条件に文配されるが,地形,土壌母材,植生等の影響を受け,土壌型ごとに特徴が 見られた。弱乾性土壌の乾燥化が土壌内部から進行する状態や,乾性土壌が降水に湿りにくいのは,主にpF<1.7の土壌 孔隙内に菌糸により形成された疎水性が水分の浸透を妨げるためである等が明らかになった。各土壌型の通年的水湿状 態の多寡は適潤性>弱乾性≧適潤性偏乾亜型>乾性であり,暖候期は寒候期よりも乾燥化しやすく,蒸発散による水分 消失が土壌の水湿状態の形成に大きく作用することを示している。
 森林土壌の保水量については,斜面上部と下部に位置するBC型とBD型土壌の保水量をpF価から算出し,その保水状態 から両土壌の保水機能上の位置付けを考察した。BD型土壌は通常は同一斜面を移動する水分を下方へ伝達する役割を果 し,上部斜面からの水分流入が中断した場合に限り自己の保有水分を消失している。斜面上部では降水後は次の降水が あるまで保水量は減少を続けるので,降水時に貯水可能な多容量の空間を準備していることになり,多量の降水を直接 地中に貯留できる。その容量で保水機能を評価するとすれば,斜面上部のBC型が優位にあるといえる。
 土壌を乾燥または湿潤化させる気象条件の数値化を試み,降水量,降水回数,気温から新たに土壌の水湿指数を作成 した。この指数を土壌の水湿状態の目安として活用することについて検討した。

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   −林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
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