(研究資料)

スギ枝打ち林分から生産された柱材の品等調査例

竹内郁雄

   要旨

 枝打ちについてはいろいろな指針が作られ,実際にも広く実行されているが,枝打ちした 林分からの製品について無節性を調べた例はごく少ない。本報告では愛媛県下の枝打ちしたスギ林分から生産された10.5cm角 で3mの心持ち柱材の品質と,枝打ち時における枝打ち箇所の幹直径との関係を調べた。試験本は,よく枝打ちされたスギ林分 から心持ち柱材2玉採材可能になった林分内の大きい個体から伐採した。試験木の1,2番玉は,根元曲がり等の欠点部を切り捨 てて採材した。製材は末口直径が小さかったため丸身の欠点を出さないよう行った。心持ち柱材の品等割合は,1番玉の柱材で 4,3,2,1面無節がそれぞれ45,33,12,5%,上小節が45%,その他が1%であった。2番玉の柱材は4,3,2,1面無節がそれぞれ3,13, 17,8%,上小節が32%,その他が27%であった。一方,丸身や傷等の欠点を無視し節の存否だけでみた無節材面は,1番玉の柱 材では77%が,2番玉の柱材では34%が無節材面数4であった。心持ち柱材木日の中心からの髄のずれは,1番玉の元,末口,2 番玉の元,末口でそれぞれ平均2.5,1.6,1.3,1.4cmで,1番玉元日が特に大きかった。髄のずれが大きい柱材には表面に節や丸 身が多く,品等,無節材面数とも低い傾向があった。枝打ち時における枝打ち箇所の皮なし幹直径は,地上高の低い箇所で小 さく2番玉の末口付近で大きかった。このため,1番玉柱材は幹の曲がりや偏心生長により髄のずれが大きかったにもかかわら ず品等,無節材面数とも2番玉柱材より高かった。10.5cm角の無節柱材を得るための当林分の枝打ち時期は,地上高2m付近まで は髄のずれが大きいため枝着生部の皮なし幹直径が5.0〜5.5cm以下,これより高い箇所では髄のずれが小さいため6.0〜6.5cm 以下で行うべきであったと考えられた。

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   −林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
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