(研究資料)

クリが優占する落葉広葉樹林における林分構造の経年推移

河原輝彦,長谷川敬一

   要旨

 19年生のクリを優占種とする落葉広葉樹林内に,間伐方法を異にする固定試験区を設け, 30年間に延6回の調査が収穫試験地調査要綱に基づいて行われた。本報告はこの資料を用いて,伐後の林分構造と変化を検討 し,さらに収量一密度図を作成して,今後の生長予測を行なったものである。
 30年間における樹種構成には,ほとんど変化は認められず,クリ,ナラ類が大きな比率を占めているが,耐陰性の強い樹種 が次第に増加する傾向が認められた。直径分布の経年変化から,設定時には,いづれの試験区でも10〜20pの範囲に大部分の 個体が合まれていたが,30年後には,間伐強度の強い程大きな径級の個体が得られ,30p以上の個体が得られるのは,クリと ナラ類であり,サクラ類,ホオノキは20〜30pに達する個体があるが,ほかの樹種は20p以下であった。
 30年後のha当たり材積は,無間伐区で250m3/ha,間伐区で200m3 /haで,この期間の年平均生長量は6〜7m3/haであった。
 さらに,将来の林分構造を予測するため,試験区ごとに収量一密度図を作成し,比較した結果,間伐の有無でB-ポイント線 は異なるが,50年生時に同一のB-ポイント線上にあることから,無間伐林の図を基としてこの林分に適用される収量−密度図 を作成し,予測の試算を行なった。

全文情報(420KB)

   −林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
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