木造試験住宅の温熱的性能 第2報

暖房時における木造住宅とPCコンクリート造住宅の温熱的特徴

葉石猛夫,末吉修三,斎藤寿義

   要旨

 性能的に木造住宅とよく対比されるコンクリート造住宅の暖房時の温度分布 とその経時変化を木造住宅のそれと比較した。
 コンクリート造・L.D.K.室は,暖房の際,加熱された空気が専ら天井スラブに吸熱され,天井直下と床上数 10p付近に急激な温度勾配を生じやすかった。しかし,その室温の経時変化は「暖まり難く冷め難い」という評 価を裏づけた。
 木造・和室は,暖房時における天井での失熱が少なく,垂直方向の温度勾配も小さい良質の温度空間を有して いた。また,単位面積当たりの熱損失係数も,木造・和室はコンクリート造集合住宅の構造的に熱の逃げが最も 少ない中層階に若干劣ってはいたが,最上階,最下階を上回る性能を示した。
 しかし,木造住宅はやはり「暖まり易く冷め易く」,室温変動率はコンクリート造の約2倍となった。また,実 際に居住者が生活する木造住宅の冬季における月平均温度が「室内暖房限界」を下回るなど,「木造は寒い」と いう一般的評価を裏づけた。
 コンクリート造に優る熱損失係数および暖房時の良質な温度性状にもかかわらず,木造が結果的に劣って評価 される原因は,主として木造の非暖房時における著しい低温感にある,と推測された。

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   −林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
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